【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
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【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学

Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd HM=HITOMI AKIYAMA

「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。

 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな体験をするのは旅とお酒が大好きで、2023年には旅のエッセイ集『じゆうがたび』を出版したフリーアナウンサーの宇賀なつみさんです。

【あわせて読みたい】宇賀なつみ サンフランシスコ編

(序章)サンフランシスコのサステナビリティ

(第1章)サンフランシスコ国際空港

(第2章)W サンフランシスコ ホテル

(第4章)サンフランシスコ近代美術館

(第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ

(終章)Returning to TOKYO

パレス・オブ・ファインアーツ

ロマネスク様式で装飾された円形のドームと、その周りを囲む池と庭園が美しい、パレス・オブ・ファインアーツ。1915 年、サンフランシスコで開催されたパナマ・太平洋万国博覧会のパビリオンの一つとして建設されました。設計したのはバーナード・メイベックという、20世紀初頭のアーツ・アンド・クラフツ・ムーブメント(美術工芸運動)で優れた功績を残した建築家です。万博開催当時は、見本市会場として76 の街区が設けられ、宮殿を含む多くのオリジナルのドーム型建物があったことから「ドーム シティ」というあだ名が付けられていたそうです。

Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

その多くは開催期間中だけ長持ちするように設計された石膏と麻材を混ぜ合わせたような簡易的な素材で建設されていたのですが、こちらのパレス・オブ・ファインアーツはデザインが好評だったことから、唯一万博後も取り壊されることなく維持されることとなった建築物であり、1965 年に再建工事が、2009年には周囲の湖と歩道の改修、耐震改修が行われ、美しい景観が継承され続けています。

また、映画のロケ地としても注目を集めていて、トム・ハンクス主演の『フォレスト・ガンプ』や、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』、トム・クルーズ主演の人気シリーズ『ミッション・インポッシブル』等にも登場しています。SF映画の金字塔『スター・ウォーズ』を制作したジョージ・ルーカスが、劇中で登場する人気キャラクターのR2D2をこちらの建物から着想してデザインしたこともファンには有名です。(ちなみに、近くにはルーカスが創設したSFX/VFX制作スタジオであるILM社があるのです。)パレス・オブ・ファインアーツが、いかに多くの映画人にもインスピレーションを与えてきた希少な存在であるかが窺えます。

現在、無料で解放されているこちらには一部、エクスプロラトリアムという科学施設が併設されていたり、イベント会場やウェディングのフォトスポットとしても人気のロケーションとなっていたりと、幅広い世代の人々に愛されている場所です。湖の周りの歩道ではベンチや芝生に座ってくつろいでいる人や、ジョギングや犬の散歩をする人たちが歩いている姿が見受けられ、目の前に佇むドームの景観も相まって、優雅でのんびりとした雰囲気があたりを包んでいました。

フェリービルディング・マーケットプレイス

続いてやってきたのは、サンフランシスコ湾に面し、サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジを直ぐそばに臨むロケーションにある、フェリービルディング・マーケットプレイスです。高さ75メートルにもなる優雅な白い塔がアイコンのこちらは、セントラル・パシフィック鉄道によって1877 年に建設された歴史ある建造物です。当時の路面電車や市内交通の拠点として多くの人に利用される最大の交通ターミナルとして活躍し、さらに多くの交通量を処理するために 1898 年に現在の形に建て替えられました。建て替え当時、設計を担った建築家のA・ページ・ブラウンは、ムーア人がスペインのセビリアに建てた 12 世紀の「ヒラルダの塔」からこの塔のインスピレーションを得たのではないかと言われています。

Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

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その後も交通の要として活躍したターミナルですが、20世紀前半には、ゴールデンゲートブリッジや、サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジといった巨大な橋の相次ぐ完成によって利用者が減少したことで徐々に衰退していきます。

そして2003年に、建物の元のデザインは保存されたまま細心の注意を払って修復され、現在の形となるフードホール&マーケットが完成しました。2階には大きな開口部が設けられ、より多くの光が地上に届くようにオープン。デザインにはヨーロッパのアーケードやデパートをモデルとして使用し、今日フェリービルディングを本拠地としている地元の職人やレストランのためのスペースが設けられました。

Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

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買い物や食事ができるマーケットプレイスとしてだけでなく、いまだにフェリー乗り場としても利用がされていて、サンフランシスコと東側のオークランド地区を結ぶサンフランシスコ ベイフェリーや、サンフランシスコ湾の北側を結ぶゴールデン ゲート フェリーなどに乗船することができて、地元の市民からも旅行者からも人気を集めるスポットとなっています。モール内の中央にはカタカタとフリップが動いて時刻やフェリーを知らせる大きな時刻表パネルもあり、ここがターミナルなのだということを彷彿とさせ、趣を感じます。

地産地消とオーガニックの精神に根差したショッピングモール

モール内をフラリと眺め歩いていると、よくあるチェーン店やアメリカを象徴するようなナショナルブランドが見当たらないことに気が付きました。こちらに出店している50近くの店舗の選別には、持続可能な経営をしているかどうかや、地元に根付いて人々から支持されているか、と言う点が考慮されるのだそう。「このマーケットプレイスに出店できるということは、サンフランシスコベイエリアを代表するお店として地元の人たちに認められた」、「大変な名誉」、と言うのは、出店ブランドの一つであるダンデライオン チョコレートのスタッフの言葉です。確かに、モール内には観光客に向けたいわゆる “ザ・お土産屋さん” 風情とした店もない様子。

Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd HM=HITOMI AKIYAMA

日用雑貨やちょっとした贈り物として気が利いたプレゼントが買えそうなお洒落なショップや、自然派コスメ、コーヒーやアイスクリーム、乾物やワインの専門店といったグルメショップも立ち並んでいて、カメラを向けている旅行者風の人ももちろんいるのですが、フラっと家から歩いてきたような軽装の夫婦が野菜を抱えていたり、ペット連れでお散歩中の人だったりと、ローカル客が通う場所なのだなと思える風景がそこにあります。

Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd HM=HITOMI AKIYAMA

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アリス・ウォータースの食哲学

(序章)でも言及した、サンフランシスコベイエリアの文化の一端にも関わるオーガニックと言う概念がこうしたところでも感じられます。毎週土曜日には建物の前で、100 以上の出店が集まるフェリープラザ・ファーマーズマーケットが開催されていて、新鮮な地元の農産物や食料品、ブランチやランチのオプションなどが幅広く取り揃えられているのです。そして土曜ほどの規模ではないですが、平日も火曜と木曜に小さなマーケットが開催されており、私たちが訪れた時にも、裸のままでゴロゴロと並ぶ色鮮やかな野菜やタルトといったスイーツ、花や植物などを売っているマーケットが並んで人が集まっていました。以前に紹介した、「シェ・パニース」のオーナーであり「食育」の創でもあるアリス・ウォータースも、心をオープンにした状態でファーマーズマーケットへ行き、生産者の人たちと交流したりとびきり新鮮な野菜を買うことを推奨しています。

Photo=YUSUKE TAMURA ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

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“地元でサステナブルな方法で生産され、ヘルシーで愛情のこもった食材を購入しているうちに、私はいつの間にか同じ価値観をもつコミュニティの一員になっていました。自然資源を守る仲間という意識でつながっているだけでなく、食べ物への感謝の心やそのおいしさ、その美しさに触れること、そして、食を通して、時と場所、季節や自然の循環とつながる深い喜びをも分かち合っていました。だから、とびきり新鮮な旬の食材、フルーツや野菜、そして卵や乳製品を見つけたかったら、私はファーマーズマーケットに行ってみます。” 

『アリス・ウォータースの世界』海老原高明(2013)小学館 より引用

彼女曰く、「毎週サンフランシスコ フェリープラザのファーマーズマーケットを訪れることで、私の人生にリズムと意味がもたらされ」るのだとか。実際に、土曜のマーケットではサンフランシスコで最も有名なシェフや著名な農家が買い物をしたり、交流したりする姿もよく見られるそうです。

文:神田聖ら(ethica編集部)

次回訪れるのは、サンフランシスコ近代美術館(SF MOMA)やダンデライオンチョコレート工場、ミシュラングリーンスターを獲得したレストランなど、サンフランシスコのサステナブルな旅を引き続きリポートしていきます!

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(第4章)サンフランシスコ近代美術館

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(終章)Returning to TOKYO

出演:宇賀なつみ

1986年東京都練馬区生まれ。2009年立教大学社会学部を卒業し、テレビ朝日入社。入社当日に「報道ステーション」気象キャスターとしてデビューする。その後、同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」「池上彰のニュースそうだったのか」等、情報・バラエティ番組を幅広く担当。2019年に同局を退社しフリーランスとなる。現在は、『土曜はナニする!?』(関西テレビ)、『池上彰のニュースそうだったのか!!」(テレビ朝日)、『日本郵便 SUNDAY’S POST』(TOKYO FM)等、テレビ・ラジオを中心に活躍中。

企画・構成:ethica編集長 大谷賢太郎

あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年7月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」を創刊。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。

創業12期目に入り、自社メディア事業で養った「情報力」と「アセット」を強みに「コンテンツ」「デジタル」「PR」を駆使した「BRAND STUDIO」事業を展開するほか、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を展開。

参考文献

Dennis Evanosky and Eric J. Kos,『San Francisco Then and Now®』, Pavilion; Illustrated edition, (January 1, 2017)

宇賀なつみさん初のエッセイ本『じゆうがたび』

気象アナウンサーからスタートし、スポーツキャスター、報道・バラエティ番組などキャリアを積み重ねる中で湧き上がった心情や直面した壁を、旅先の記憶と共に綴った55のエッセイ。学生時代・プライベートのことなども飾らずに語られています。等身大の宇賀なつみが惜しみなく表現されていて読み進めるごとに人としての彼女を好きになっていく…、そんなエッセイ本です。

『じゆうがたび』は発売中

詳しくはこちらから

https://amzn.asia/d/igNdB3J

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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