[連載企画]人を癒す希望の火を灯す(第4話)キャンドル・ジュンさん SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2021 – 【ethica副編集長対談】
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[連載企画]人を癒す希望の火を灯す(第4話)キャンドル・ジュンさん

(第3話)に続き、今回の副編集長対談はキャンドルアーティストCANDLE JUNE(キャンドル・ジュン)さんとオンラインで行いました。

キャンドル・ジュンさんは、1994年よりキャンドル制作を始め、2001年より平和活動『Candle Odyssey』を開始。紛争地や被災地を巡り、キャンドルに火を灯す活動を行っています。2011年3月11日に発生した東日本大震災から10年、被災地支援を現在まで続けてこられ、毎月11日の月命日には必ず現地で復興イベントを実施されています。

そんなキャンドル・ジュンさんに、キャンドルとの出会い、ご自身が率いる⼀般社団法⼈LOVE FOR NIPPONによる東北被災地域での支援活動、そして、これからの未来の作り方についてお話を伺いました。

SONG OF THE EARTH(ソング・オブ・ジ・アース)

萱島: 東日本大震災直後から現在までの支援活動についてお伺いしてきましたが、ジュンさんが始められた復興イベント「SONG OF THE EARTH」についてもお聞きしたいです。

新潟県中越地震の支援をきっかけに、2008年にスタートされたのですよね。福島県内では2017年に郡山の仮設住宅でスタートされ、2018年はいわき市にある双葉町の仮設住宅で、そして2019年からはJヴィレッジで開催されています。今年の「SONG OF THE EARTH」はコロナ禍で、開催にあたり多くのご苦労があったのではないでしょうか。今回のイベントに向けてのお気持ちなどお聞かせください。

CJ: 復興イベントというふうにとらえられてしまうと、命日だから復興イベントをしていると想像されると思うのですが、僕からするといま言ったような形で、これからの未来をどう作っていくかという課題を発表する日だったり、また新たにつながる日にすべきだと思っています。

毎月の月命日に行う「CANDLE 11th(キャンドルイレブン)」というキャンドルナイトでは、福島の人々やその仲間たちに思いやメッセージを書いてもらったものを点しています。それを一堂に集める日ということでキャンドルナイトを行うんですが、その時になぜカップに思いを書いてもらっているかというと、メディアにはなかなか出てこないような福島各地の人たちのさまざまな思いが、キャンドルメッセージカップという1つのメディアとなるからなんです。

その場には子どもたちもいたりするので、彼らには3月11日の悲しい思いを書いてもらうよりも、これからの夢を書いてもらうようにしています。

そうしたら、子どもたちが書いたものから「人の役に立つ仕事に就きたい」「助けてもらったから自衛隊に入りたい」「警察官になりたい」「お医者さんになりたい」といった夢がたくさん出てきたんですよ。災害があって大変だった過去の出来事だけではなくて、あの日から毎日毎日を積み重ねて、今日を笑顔で生きていこうと頑張った福島の人たちがいるからこそ、そういう子どもたちが育っているんですね。

この事実を、放射線量がどうしたということ以上に世界中の人たちに伝えたいですし、福島の子どもたちが放射能で心配だというよりも、子どもたちの夢の多くは人の役に立つ仕事に就きたいと思っていることを伝えたいと考えて、凧揚げをするんです。

凧揚げもキャンドルナイトも、自分でなければできないではなくて、福島の子どもたちのアクションありきで育っていくイベントだと思うので、フェスティバルとはまた別の軸でやっていきます。さらに去年実現できなかったシンポジウムも、環境庁と共同で開催することができました。このシンポジウムは、まさにこれからの未来を作っていく現実的なプロセスの部分を重視していて、今年このシンポジウムの開催がちゃんとできたので、毎年行っていこうかなと思っています。

それと、3月11日が終わっても春から福島ラウンド、日本ラウンドというふうに名前を決めて、会津地方であったり、その他福島県内のさまざまな地域でシンポジウムを開催して、子どもたちと企業の人、専門家を集めて、災害のこと、エネルギーのこと、環境のことなどを勉強してもらいながら福島から発信していくことをやりたいなと考えています。

原発事故は最大の出来事ですので、その福島原発に取材が集まることで、福島イコール原発事故というイメージが多く発信されてしまって、福島の風評被害につながってしまうことは否めません。それであれば、その事故が起きてから日々頑張っている福島の大人たちや子どもたちの夢をもっとクローズアップしていって、それじゃあ、どうしようかということで立ち上がっている結果の福島を見てもらったり、感じてもらうアクションのほうが自然的側面から見ても効果があるのではないかと思っています。

被災していない地域の人たちは、事なかれというか、あまり関心のない人も少なくないと思いますが、被災地の人たちだって被災前は、みんなそう思って居たはずです。自分がなってみなければ分からないということが全ての被災地に当てはまると思いますが、そうなってからでは遅いんですよね。そういうことも考えると、防災的な側面ももちろん重要じゃないかと思っています。

復興イベント「SONG OF THE EARTH」としても、また一般社団法人LOVE FOR NIPPON(ラブ・フォー・ニッポン)としても、防災的側面を課題としていることを考えると、あれから10年も経っているのにまだ活動しているっていわれるよりも、だからこそ本当に自分たちの蓄積した経験や知識、手に入れたつながりを生かして、これからの未来を提案していくということこそが「LOVE FOR NIPPON」という名前の意味なんじゃないかと考えています。

連載企画「人を癒す希望の火を灯す/キャンドル・ジュン SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2021 –」全8回にわたってお届けしてまいります。どうぞお楽しみに。

 

【連載】「人を癒す希望の火を灯す」を読む>>>

CANDLE JUNEキャンドルジュン

アーティスト/ フィールドデザイン/ ディレクター

1994年、キャンドル制作を始める。「灯す場所」にこだわり様々なフィールドで空間演出を行い、キャンドルデコレーションというジャンルを確立。

2001年、原爆の残り火とされる「平和の火」を広島で灯してからは「Candle Odyssey」と称し、悲しみの地を巡る旅を続ける。

2011年、東日本大震災を受けて「一般社団法人LOVE FOR NIPPON」を発足し支援活動を始める。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部卒。総合不動産会社に新卒入社。「都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げを行う。IT関連企業に転職後はwebディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネットなどがある。その後、研究機関から発足したNPO法人に参加し、街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。2018年11月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

ーーBackstage from “ethica”ーー

東日本大震災から10年を迎える福島で、CANDLE JUNさん率いる一般社団法人LOVE FOR NIPPONによる追悼復興イベント「SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2021 -」が3月10日(水)から4日間にわたり開催されました。『One more action !』をテーマに、開催が叶わなかった2020年の想いとともに、CANDLE 11th、3.11夢の大凧あげ、FESTIVALやシンポジウムといったイベント実施されました。詳しくは公式サイトをご覧ください。

SONG OF THE EARTH 公式サイト
http://songoftheearth.info

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

萱島礼香

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