一生仕事を続けるための方法を考え続けてきた高津玉枝さん【ethica Woman】
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
一生仕事を続けるための方法を考え続けてきた高津玉枝さん【ethica Woman】

【ethica Woman】は、働く女性がキャリアを積む過程で考えてきたこと、仕事をする上で知ってほしいことを、様々な女性に聞いて紹介するシリーズです。

第2回目は、フェアトレードショップ「LOVE&SENSE」を展開する高津玉枝さんにお話を伺いました。高津さんは2012年に経済産業省のソーシャルビジネスケースブックに取りあげられた、手仕事で東北を支援するプロジェクト「EASTLOOP」の運営もなさっています。

一生仕事をしていくために、キャリアプランを家族との生活を含めて考える 

 

会社員退職後、商社に入社。退職後にマーケティングを行う会社を立ち上げ。経営をしながら、オックスファム・ジャパンを立ち上げに寄与、2006年にフェアトレード商品を中心にした事業を行う会社を興す…… 高津さんのご経歴を見ると、キャリアを順調に積み上げられてきたように感じるのですが、キャリアプランは立てていらっしゃったのですか?

 

高津玉枝さん: 「○歳までに会社を興そう」などとキャリアプランを立ててきたわけではありません。自分が体調を崩したり、会社を作らないといけない状況になったり、義母が骨折したりと、何か必要に迫られたときにその時々で「私は今50歳。あと5年で義母は90歳になる。今回義母は骨折ですんだけれど、10年後は今より介護が大変になるはず。そのときにも仕事をするためには……」と家族との生活を含めてキャリアを考えてきました。

学校を卒業し、社会に出てみて強く思ったのは、仕事というものがおもしろいということ。学生時代の勉強では記憶力が一番大事。でも仕事ではコミュニケーション能力など、様々な力を使って成績を上げていくことが評価されます。それがとてもおもしろいと思ったので、私は一生仕事を続けていこうと決めました

ただ、私が社会に出た頃は女性が働き続けるための法律自体がなかったので、当然のことながら会社にも制度がありませんでした。そこで、一生働き続けるための方法を探すために、若いうちに今いる会社だけではなくて様々な世界を見ておかなくては、と2年で退職しました。

一生働き続けるための方法を考えて若い段階からキャリアステップを踏んだのですね。

 

高津さん: そうですね。結婚もしていなかったのですが、30歳までに子育てをしながら仕事ができる環境を作れたらいいなとぼんやりと考えていました。そこで入社したのが、雑貨を扱う商社。扱っている商品がシンプルかつスタイリッシュでステキだったのです。小さな会社だったので、企画から仕入れ、営業、経理までやらせていただいて、会社の経営というものを学ぶことができました。

年を重ねると経験は増えるが、失っていくものもあるということを常に意識する

 

その後、ショッププロデュースやPRを行うマーケティング会社を興したのはどんなきっかけだったのですか?

 

高津さん: 商社では5年ほど働いたのですが、生意気だったからか(笑)、社長と意見の衝突があったり、忙しすぎて突発性難聴になったりしていました。そんななか、関西圏で働く女性の異業種交流会である「よこの会」(http://www.yokonokai.org)というものに入ったんです。もうすぐ30年になる団体なのですが、錚々たる先輩女性がいらっしゃって、仕事上の悩みなどを相談することができました。

 

そのメンバーの中に、非常に活躍されているコピーライターの方がいらっしゃいました。街中で彼女のコピーをあちこちで見かけるくらい有名な方でした。その彼女が「自分の感性では捉えられないものがでてきた」と、コピーライターを辞めて大学に戻り、カウンセラーに転身したのです。彼女はその時まだ40代。私は20代後半でしたが、年を重ねるということは経験を積むことではあるけれど、失っていくものもあるということなのだと気づきました。その年齢での自分の強み弱みを常に意識するようになったのです。

 

1991年に退職してフリーランスでショッププロデュースやPRの仕事を始めたのです。幸い、「よこの会」に読売新聞のデスクがいて、1年間新聞の連載を持たせてもらえたり、商社時代にロフトや百貨店に、売り場の企画を提案したり、といった経験が強みになり、仕事は順調でした。今思えば、そのときには「若い感性」もプラスに働いて、仕事を任せてもらえたのでしょうね。

 

―その後に、貧困の克服を目指す国際NGOであるオックスファム・ジャパンの設立に参加なさいましたが、どんなことがきっかけだったのですか?

 

高津さん: オックスファム・ジャパンは2003年に立ち上がりました。実は1990年代後半から、マーケティングの仕事をしながら、安い物ばかりが売れていくことに疑問を感じていました。商品が完成するためには、多くの人が関わっています。その中の誰かにしわ寄せがいって、理不尽なことを要求しているのではないかと。

 

そんななか、「フェアトレード」という概念に出会いました。おもしろいと思ってインドに行ってみたのですが、雑貨の仕事をしていた経験から、コミットしたいと思えるような商品には、残念ながら出会えませんでした。唯一、イギリスのオックスファムが作っている紅茶用のマットが素敵と感じました。

 

現場主義なので、オックスファムの本拠地であるイギリスにいってみたところ、800店舗も古着やフェアトレード商品を扱っているお店があることが判明しました。また、経営者の視点から見て、戦略的で非常に優れた組織だと感じました。そこで、オックスファム・ジャパンの立ち上げに参加することにしました。ただ、立ち上げたものの、団体の規模も小さく、数か年の事業計画にフェアトレードは組み込まれませんでした。でもどうしてもやりたい。そこで、2006年に株式会社福市を立ち上げ、自分でフェアトレード事業に取り組む決心をしました。

失敗したときは、様々な角度から徹底的に分析し、それを次に生かす

 

高津さん: 当時も、フェアトレードに関心が高い人向けのフェアトレードショップはありました。先輩たちが汗水流して作り上げた市場です。自分が取り組む意味はどこにあるのか、同じターゲットに向けて事業を行っても、あまり意味がないし、広がりません。フェアトレードに関心のない人たち、知らない人たちに、「フェアトレードだから」という理由抜きでも買ってもらえるような店を作りたいと思いました。

 

―最初の店は予想通りにうまくいったのでしょうか?

 

高津さん: 実は、大失敗しました。最初の店は、かつてのご縁をいただいた名古屋ロフトのクリエイターズマーケットというイベントの期間限定ショップをやらせていただいたのです。名古屋ロフトだし、期待していたのですが、1日の売り上げがチョコレート1枚250円だけの日もあるくらい。

「舞い上がりすぎていた」と反省し、失敗の原因を調べるべく、インターネット調査を行ったら、当時のフェアトレードの認知度は約3%しかありませんでした。でも、フェアトレードを知らない人に、フェアトレードの概念を紹介すると、「そういう商品なら買いたい」と80%以上の人の態度が変容することもわかったのです。その他、失敗の原因と次に生かすためのポイントを徹底的に調べあげました。その結果、次は、表参道ヒルズで期間限定ショップを出すことができ、LOVE&SENSEが始動しました。

 

―失敗したら、失敗を徹底的に調べ上げて次に生かしたわけですね。手仕事で被災地を応援するEASTLOOPはどのように始まったのですか?

 

高津さん: 2006年から始めたフェアトレードの事業に専念しようと、2010年末にマーケティングの会社を解散し、4月からLOVE&SENSEに本腰を入れようとしていた矢先に、東日本大震災が起きました。私は、阪神大震災で被災していたので、そのフラッシュバックで少しダウンをしてしまいました。でも、私たちが扱っているフェアトレードの商品の中に、2006年のジャワ島中部地震の被災者が作った商品があることを思い出したのです。

フェアトレードの商品を作っている人たちから、「自分たちは民族の誇りがあるから、施しはいらない。自分たちで作ったものを売って生きていきたい」と言われたことを思い出しました。仕事をすることは単に収入を得るだけでなく、誰かから感謝されることが生きる力にもつながるのです。

そこで、心を癒す効果のある手仕事を被災地に作ろうと思いました。手編みの、ブローチを作ってもらって、被災地を応援したい人たちに買ってもらったり、売ってもらったりする仕組みを作り、EASTLOOPを始めました。

 

―EASTLOOPは今後も続けていかれるのですよね。今後、高津さんが取り組みたいと考えていらっしゃるのはどんなことですか?

 

高津さん: EASTLOOPは、今までは私たちが運営していましたが、仕組みを東北に移管していきます。今後は東北発のブランドとして、成長していってほしいと願っています。そのために、しばらくはマーケティングや商品開発等手伝っていこうと思っております。

今の課題は、EASTLOOPだけでなく、LOVE&SENSEをもっと拡大していくこと。途上国にある地域の伝統工芸をアレンジし、かわいかったりかっこよかったりするような商品を生み出していくこと。人々が買う商品の5%くらいが、フェアトレード商品になったらいいなと思い、同時に途上国の現状を伝え続けていきたいと思います。

リサイクルのプルタブを使って作られたバッグ(ブラジル製)

高津さんが20代、30代の働く人に薦めたいこと

 

―今後もさまざまな取り組みをなさるのですね。では最後に、ご自分でキャリアを切り開いてきた高津さんから、今の20代、30代の働く人に「これをした方が良いよ」と薦めたいものがあれば教えてください。

 

高津さん: フェアトレード商品を探しに、途上国に行くことが多いのですが、若い人には途上国でのインターンシップなどに参加することを薦めたいです。日本で仕事をしていると、触れる人も出会う出来事も、日本仕様の枠に収まります。でも、途上国だと、想定外のことが頻繁に起こります。こういった想定外の経験を重ねないと、グローバル化の中で活躍するのは難しいと感じます。

 

また、どんな仕事をするにも、「やだな、やりたくないな」と思う仕事もバカにせずにやってみた方が良いです。自分で経験したことが、後にどれだけ役に立つことか。私も梅田ロフトのオープンのときには、荷物を80パッキン作ったりしましたが、この経験もLOVE&SENSEを運営するのに役立っています。

 

それから、誰かに何かをしてもらったら、お礼だけではなく、その後どうなったかの報告をすること。そして、その恩を次の世代に送ること。これは「よこの会」で学んだことなのですが、仕事ができる人はみんなちゃんとやっているのです。

 

―とても勉強になりました。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

<高津玉枝さんご経歴>

大学卒業後、富士ゼロックスに営業職として入社。その後雑貨商社に転職。91年にショッププロデュースとPRを行う会社を設立。90年代後半、フェアトレードの概念と国際NGOオックスファムの商品に出会い、03年にオックスファム・ジャパン設立に寄与、12年まで理事を務める。06年にフェアトレードを中心とした事業を行う株式会社福市を設立。08年フェアトレードのセレクトショップLOVE&SENSEを立ち上げ、様々な商業施設でイベント出店。2012年阪急うめだ本店にLOVE&SENSEの常設店舗をオープン。2010年、20年続いた会社を解散。東日本大震災後、フェアトレードの考えをベースにした、手仕事で東北を支援するプロジェクト「EASTLOOP」を立ち上げる。現在までに作り手約200人に2600万円以上の収入を生み出し、経済産業省のソーシャルビジネスケースブックにも取り上げられる。12年よりEASTLOOPのノウハウを移転する事業が、経済産業省の補助事業として認められ活動中。ソーシャルメディアfacebookを用いて常に情報を発信しています。

NPO法人フェアトレードラベルジャパン 理事
一般社団法人 フェアトレードタウンジャパン 監事

http://www.love-sense.jp/
http://www.east-loop.jp/

 

<講演情報>
高津玉枝さんのことをもっと知りたい方におススメ!

 ・10月17日(木)19:00~21:00
EARTH MANUAL PROJECT展にて、EAST LOOPに関連するセミナーをインドネシアのイカプトラ大学教授(建築家・災害・防災の専門家でもある)と対談形式で開催。
主催 デザイン・クリエイティブセンター神戸

http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/4882/ 

 

・11月29日(金)13:30~17:30
「企業と社会的責任と人権」セミナー
ドーンセンター・7F・ホール
(大阪府大阪市中央区大手前1-3-49)

 

取材協力=株式会社福市 高津玉枝さん

FelixSayaka

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
正しい手洗いは地球を救うー「世界にいいことプロジェクト」2選
独自記事 【 2022/5/9 】 Work & Study
エコノミーからエコロジー、そしてエシカルへ。モノを大量に生産・消費し、使い捨ててしまうシステムから脱却し、身体的・精神的・社会的に満たされたウェルビーイングを追求する動きがあちこちで生まれています。今回、ethica編集部は「世界にいいことプロジェクト」として、一般社団法人Earth Companyによるロヒンギャ難民...
【あむんが行く!第1話】 TBSのSDGsプロジェクト!「ミツバチ教室」で蜜ろうキャンドルづくりを体験
独自記事 【 2022/3/7 】 Work & Study
ethica編集部員の娘(5歳)が、様々なエシカルな体験を繰り広げていく、新企画「あむんが行く!」 “あむん”という名前の由来は、紀元前1000年頃より、二千年の長きにわたって栄えたマヤ文明のマヤ語からきています。意味は“森の神”。自然と親和性のある名前を持つあむんが、今後様々なエシカルな体験を繰り広げていきます。娘の...
“自分にも環境にもやさしい”インナーウェア「WACOAL ナチュレクチュール」
INFORMATION 【 2022/2/21 】 Fashion
肌に直接身につけるインナーウェアは着心地が大事。加えて、環境に寄り添ったアイテムであれば、なおさら手に取りたくなります。「Wacoal ナチュレクチュール」は“自分にも環境にもやさしい”を目指したインナーウェアラインです。肌ざわりの良さに加えて、環境や社会に配慮した製品へのこだわりが光ります。今回はそんなアイテムの魅力...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
SDGsは「自分の暮らしの中」で向き合う。
sponsored 【 2019/11/25 】 Home
気候変動やグローバル化で深刻化する問題に対応するため、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)。貧困や格差の解消、地球環境の保全などをめざし、全ての国連加盟国が2030年までに取り組む行動計画だ。企業は単なる社会貢献ではなく、本業を通じた活動が求められている。ボルネオ島の生物多様性保全やアフリカ・...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
美しき理系アーティスト、スプツニ子!さんに伺いました!(前編)「質の高い教育をみんなに」
独自記事 【 2019/9/28 】 Art & Culture
9月22日(日)〜29日(日)のSDGs週間(*)にフェイスブック ジャパンが開催している「Facebook Fundraisers for SDGs」で、「質の高い教育をみんなに(SDGsの目標4)」を達成するため、アメリカのNPO団体「Girls Who Code」への募金キャンペーンを立ち上げたスプツニ子!さんに...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

「テレビ番組の収録で「愛フェス」に来ています」 エシカリスタVol.4 原田さとみさん
大好きなファッションで社会貢献する。ピープル・ツリーの新作で秋のおしゃれをスタート! <INFORMATIONコーナー記事>

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます