(第12話)二拠点生活を考える【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」
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(第12話)二拠点生活を考える【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」

Photo: 砺波周平

リモートワークが浸透し「暮らし」について考え直すことが増える中、都会と地方の二拠点で生活しようと考える人が増えています。その候補地として人気がある八ヶ岳エリア。東京から電車や車で約2時間、名古屋から3時間程度という距離感と豊かな自然環境が理由です。もし今の住まいと別の場所で暮らすとしたら、どんな家に住みたいですか?もし田舎に家を建てるとしたら?想像するだけでワクワクしませんか? 

前回は、四井さんの住まいについてご紹介しました。今回は、八ヶ岳で人と自然環境に優しい「循環型の暮らし」を提案する『アトリエデフ』を訪ねました。

二拠点生活の聖地で20年「自然と寄り添う」家づくり

最近メディアなどでも「二拠点生活=デュアルライフ」という言葉をよく耳にするようになりました。リモートで働く人が増え、郊外や地方でゆったりと暮らしたい、週末は都会を離れたいという思いから、自然に囲まれた場所に家や仕事場を持ちたいというニーズが高まっているようです。

八ヶ岳エリアにおいて、20年も前から「家と暮らしづくり」をサポートしている工務店『アトリエデフ』。最近では、「移住に興味があるけど何から手をつけていいかわからない」「週末移住にオススメの場所は?」といった相談が増えているのだとか。デフの特徴は、この土地の風土や環境を熟知していることと、ものを消費するだけの暮らしじゃなくて、自らが自然とともに「持続可能な暮らし」を実践していること。その一貫した姿勢が、今、あらためて暮らし方について考えたいと思う人や、環境問題に関心がある人たちの間で注目されています。

さっそく長野県原村にあるオフィスを訪ねてみました。

誰もが安心して暮らせる「家」とは?

長野、山梨、埼玉、そして関東の湘南エリアなど、広く営業所を展開する『アトリエデフ』。その中でも、今回訪ねたのは「八ヶ岳営業所」。標高1100m、八ヶ岳の山々に囲まれ、360度大自然が広がるロケーションに位置する長野県原村にあるこの営業所は、オフィスというより「暮らす家」そのもの。敷地内には畑があって、薪小屋があって、庭には木製のブランコやツリーハウス、玄関先には漬物が漬けてあって…。

仕事場というより、何だかお友達の家に招かれたような気分。ワクワクしながらさっそくお邪魔してみました。

庭には木製のブランコ。遊び心がいっぱいの庭スペース

広々とした敷地の中に建つ『アトリエデフ』のオフィスはまるで、住まいそのもの

玄関先に置かれている漬物樽。真冬の間は表面に氷が張り、パリッとした食感の野沢菜漬けができる

デフは「人にも安全、地球にも迷惑をかけない素材で、なおかつずっと快適に暮らせる家を作る」というコンセプトを掲げ、木や土などの自然素材を使った家づくりと暮らしを提案しているそうです。そのこだわりのひとつに断熱材があります。

都会のマンションなどで暮らしているとあまりピンとこないかもしれませんが、断熱材は、その名の通り住宅の重要な「断熱性能」を担っている建材です。断熱の良し悪しによって、家の寿命や快適性が決まるといっても過言ではありません。

「現在、日本の一般的な木造住宅には、グラスウールや発泡プラスチック系断熱材が使用されています。出来上がるまでの時間も短く、その分コストも安く仕上がるでしょう。しかし石油化学製品で作られた断熱材の中には、揮発性化学物質が多く使われているものもあり、シックハウス症候群やアレルギーの原因になることがあります。とくに最近の建物は断熱効果を高めることが優先され、窓も小さく、風通しが悪いために結露によるカビが発生しやすくなり、健康へのリスクだけでなく、家の寿命を早めることにもなります」

と、デフ代表の大井明弘さんは言います。かつて別の工務店で働いていた大井さんは、新建材を使って自邸を建てた後に家族にアトピーなどの健康被害が出てしまったのだとか。

自然素材にこだわる理由は、自らの経験が原点にあるそうです。

デフで使用している断熱材は、間伐材を繊維状にしてできている『ウッドファイバー』。ウッドファイバーは、暑さや寒さを遮る断熱効果・調湿機能・防音など、木でなければ持ち得ない特性を備えています。健康を害する心配がない自然素材であるばかりか、廃棄する過程で廃棄物も出ません。仮に100年後に家を建て替えようと解体したときにも、自然に還る木材であれば環境への不可がないというわけ。建築用材としては使い道がなく、山に放置されていた間伐材から作られているところも、エコですね。

ウッドファイバー

「もともとドイツで開発された断熱材ですが、デフでは北海道で作られているものを使用しています。ニュージーランドの羊毛も断熱材に使用していますが、建材のすべてを国内から調達したいという思いから、現在ではこのウッドファイバーがメインになっています」

国産無垢の木材にこだわり「トレーサビリティ」に取り組む

国産無垢による家は木の香りに包まれ、住まい手を癒してくれる

家を建てる際に使用する木材は、すべて国産無垢。なぜ国産材にこだわるのでしょうか?

「輸入材は国産と比べると価格面での魅力はありますが、海外から日本に運ばれるときに薬剤による防虫・防腐処理が義務付けられているため、その薬品がシックハウス症候群などの健康被害を引き起こす心配が否めません。そのために、産地や生産者が明らかな国産材、乾燥や加工の工程で薬品を一切使っていないことが明らかな素材を厳選して使用しているのです」と大井さん。

使用する木材がどこで伐採され、どのように流通したのかがわかるトレーサビリティーに取り組む

デフが厳選したすべての建材は、誰がどこで育て、どのような流通を経たものかがすべて正確にわかる仕組みになっています。

ちなみに現在は、国内の山を管理してさらに良くするために活動している『くりこまくんえん』の無垢材を主に使い、ともに山の整備にも取り組んでいるのだそうです。建材も野菜と同じように作り手の「顔」が見える時代なんですね!

使用木材のトレーサビリティが保証されていれば、暮らし手も安心して木造住宅を建てることができるに違いありません。

一方、「木を使うと自然破壊になるのではないの?」と思う人もいるかもしれませんが、実は逆。国産の木材を使うことは、日本の森林を守り、環境を守ることにつながっています。

国土の2/3が森林で覆われているにも関わらず、木材輸入の増加に伴い、日本の林業や木工業が衰退の一途を辿り、サステナブルでなくなってきている今日この頃。手つかずの森林が増え、放置されたままになっているところも珍しくありません。

「日本の木を使えば使うほど、山に人の手が入り、森は本来の機能を取り戻します。土砂災害の発生を防ぎ、野生動物たちを保護するためにも、これからもっと国産の木を使用するべきなのです」

「家づくり」とともに豊かな「暮らしづくり」を提案

土間や薪ストーブが設置された開かれた空間デザインが魅力の家は、日本の伝統的な建築スタイルを現代風にアレンジ

国産無垢材を使ってつくられた家の床や手すり、棚やキッチンなど、歩いたり、手に触れたりする場所には、蜜ろうワックスを塗ることを推奨しています。エゴマやミツバチの巣からつくられた自然塗料を木になじませることで、防汚や水シミがつきにくくなり、木のもつ美しさを長く持続させることができます。

古来より接着剤として使われてきた膠(にかわ)を主原料にした天然の接着剤は、化学肥料を含まず、ホルムアルデヒドの放散のない安全な素材

アトリエデフの家づくりでは基本は接着剤は使用禁止ですが、家具などでどうしても使わなければならない時は、昔から使われてきた膠(にかわ)を原料に、岩手産の木酢液(もくさきえき)や亜麻仁油、青森ヒバ油を加えた天然接着剤を使用しています。ホルムアルデヒドの放散ゼロの実績ある安全性の高い接着剤です。

その他、環境に配慮した電気配線「エコケーブル」、環境ホルモンの排出のない「ステンレス配管」など、家づくりに使う小さな材料に至るまで、細かなこだわりがいろいろ。大井さんのお話は聞けば聞くほど奥が深く、驚きと発見がいっぱいです。

「循環型の暮らし」を実現するモデルハウスは“小さな地球”

「循環の家」の入り口。2010年にオープンしたモデルハウスでは田舎暮らしが体験できる

2010年にはアトリエデフの敷地内にモデルハウス『循環の家』がオープン。

「この敷地内のすべてが循環する『小さな地球』を実現したいという願いから、“循環の家”をコンセプトにしたモデルハウスを建てました」

この家の特徴は自然素材を使用してつくられているだけでなく、その名の通り暮らしのすべてが循環型であることです。

太陽光発電を蓄電し、水は雨水を地下タンクに溜めてトイレや畑などに使用。キッチンやトイレの排水は自然の力で濾過したあと、メダカやカエルが住むビオトープへと流れる仕組みになっています。

自然の恵みを生かし、使い終わったとき還せるものは還し、使えるものは再利用する、まさに『小さな地球』そのものです。

本当に豊かな暮らしとは、環境と共存する暮らしであることに気づかされます。

持続可能な暮らしが体験できる「循環の家」からの眺め。目の前には自家農園と八ヶ岳の山々が広がる

「良い家は、良い暮らしがあってこそ」という大井さん。アトリエデフが提案するのは「家をつくること」そのものではなく、未来を生きるための「暮らしづくり」そのものなのです。

家づくりで余った壁土を利用して、土間や庭にかまどづくりの提案も。火を起こし、昔ながらのかまどで煮炊きする楽しみが体験できるもの、田舎暮らしの醍醐味かも?

これからの大型連休や夏休みにかけては、都会から土地や家探しに訪れるご夫婦や家族がますます増加する季節。アトリエデフでは、家づくりや田舎暮らしの楽しさを体験するさまざまなイベントを行なっています。薪割り体験や、えごまの油絞り、スウェーデントーチ作りetc. また、オンラインイベントも開催しているので、二拠点生活や田舎暮らしに興味がある方はチェックしてみてはいかがでしょう。単に家や土地探だけではなく、地球の未来を考えた良い暮らし方のヒントが見つかるかもしれません。

写真協力/ KIMITO

【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」を読む>>>

記者:山田ふみ

多摩美術大学デザイン科卒。ファッションメーカーBIGIグループのプレス、マガジンハウスanan編集部記者を経て独立。ELLE JAPON、マダムフィガロの創刊に携わり、リクルート通販事業部にて新創刊女性誌の副編集長を務める。美容、インテリア、食を中心に女性のライフスタイルの動向を雑誌・新聞、WEBなどで発信。2012年より7年間タイ、シンガポールにて現地情報誌の編集に関わる。2019年帰国後、東京・八ヶ岳を拠点に執筆活動を行う。アート、教育、美容、食と農に関心を持ち、ethica(エシカ)編集部に参加「私によくて、世界にイイ。」情報の編集及びライティングを担当。著書に「ワサナのタイ料理」(文化出版局・共著)あり。趣味は世界のファーマーズマーケットめぐり。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

山田ふみ

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