読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第9章:人が去るということ(第2節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第9章:人が去るということ(第2節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第9章は「人が去るということ」と題してお送りします。

第9章 人が去るということ

第2節 役割の齟齬

人と出会うことの多い季節で、私が必ず考えてしまうのは、「いつこの人は私の前から去るだろうか」という極めて悲観的な考えです。「諸行無常」と言えば聞こえは良いですが、そこにはどこか諦めのようなものも漂っていて、必ずしもその刹那的な出会いを尊ぶ姿勢はありません。

今回、連絡しようと決意した友人も、決して例外ではありませんでした。彼女は、とある国際交流プログラムで出会った学生で、現在はベトナムにいます。プログラム中は特に仲が良く、プログラム終了間際には互いの別れを偲んで、空港で涙を浮かべるほどでした。ところが、それ以来、ほとんど連絡を取ることはなく、SNSでかろうじてイイネを送り合う程度です。このような、意図を持って作られた空間(「プログラム」)で構築される人間関係というのは、特にその枠組みがなくなった途端に――この場合は「プログラム」が終了することによって――終わってしまうものですから、私は連絡を取り合わないことに対して驚きもしませんでした。ただ、前回のイントロで述べたように、私の心には、鈍い痛みが確かに存在していて、それが私を苦しめるのです。

そこで今回、彼女に連絡を取りました。以下は、実際の対話の記録です。

 

 

まずは、簡単な挨拶から。

「久しぶり!調子はどう?」と聞くと、さっぱりとした返信が。

「いい感じ」。なんとも淡泊な言葉で、私は開始早々たじろぎます。数か月、ややもすれば1年以上ぶりに言葉を交わすのに、どうしてこんなに「軽い」のだろうか、と。とはいえ、かつては仲の良かった友人ですから、その後は簡単な近況報告が続きました。

一通り会話した後で、本題に入ります。彼女は回りくどい言い方が嫌いなので、私は単刀直入に「どうしてこの関係は長続きしなかったんだと思う?」と聞いてみました。すると、彼女からは極めて現実主義的な回答が来ました。

「大体私が人前から去るときっていうのは、相手がもう自分にとって大事じゃなくなったときかな」

私は彼女のスピード感に置いていかれてはならないと感じて、その真意を深掘りしようとしました。「僕らの関係でもそうだった?」という質問への彼女の回答が次です。

「うん、辛かったけどね。『こうでありたい』っていう私を、あなたが必要ないっていうのがわかったから、去らなきゃいけなかったの」

彼女にとって、人間関係には、「自分が演じたい役」と「相手から期待される役」があって、そこに齟齬が生じたときに、彼女は「去る」という選択肢を取るのです。思えば、誰にもそういう側面はあるのかもしれません。他者から期待される役割と、自分がこうでありたいと思う役割の間に大きなギャップがあるとき、とても大きな苦痛が生じることがあります。

 

彼女は、こう続けます。

「私たちが連絡を取り合わなかったのは、私たちの生活のどこにも共通点がなかったからだよ」

互いの生活に共通点があるということが、彼女にとっては「自分が演じたい役」と「他者から期待される役」が一致している状態を指しているわけです。互いの世界が重なり合っていなければ連絡は取り合わない。確かにそれはとても自然なことのように感じるのですが、一方でそこにどうしても引っかかってしまう自分もいます。果たして、友人関係の線引きはそこで行われるのだろうか、と。一度は交錯した世界をまるでなかったかのように忘れ去って、そして「いま・ここ」にある世界だけで人間関係の取捨選択を行っていくことが、ウェルビーイングなことなのだろうか、と。

 

そう考えていると、彼女の次の発言が、私をさらなる内省へと突き進めていきました。

 

(続く)

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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ethica編集部

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