【連載】恋するフィンランド! (第2話)フィンランド建築の巨匠アルヴァ・アアルトを描いた映画『アアルト』をご紹介
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【連載】恋するフィンランド! (第2話)フィンランド建築の巨匠アルヴァ・アアルトを描いた映画『アアルト』をご紹介

©︎Aalto Family

「森と湖の国」そして「世界一幸福な国」フィンランド。近年の世界幸福度ランキングでは5年連続で一位に輝く、北欧・フィンランドは、サステナブルな国として高く評価されています。デザイン大国としても人気が高く、そのシンプルで機能的、かつ有機的で温かみのあるデザインの家具や日用品は、昔から現在に至るまで多くの人々に愛されています。

ethicaでは、そんなフィンランドからウェルビーイングな北欧ライフスタイルを学ぼうという「恋するフィンランド!」企画が進行中。

第2話の今回は、フィンランドが生んだ近代建築の巨匠であるアルヴァ・アアルトを取り上げたドキュメンタリー映画『アアルト』(2023年10月13日〜公開)の紹介です。

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生誕125周年!アルヴァ・アアルトのドキュメンタリー映画『アアルト』

「人間を基準にする。松や白樺と同様、人間も自然の一部だ。人間を巨人や妖精にはできない。自然のサイズに従うべきだ。」

©︎FI 2020 - Euphoria Film

 1898年にフィンランドのクオルタネで生まれた20世紀を代表する世界的建築家、アルヴァ・アアルト。大きな恩恵と厳しさを兼ね備える、雄大な自然環境と隣り合わせで暮らす北欧の人らしく、アアルトの生み出す作品には自然を愛して、人間と自然を一体とみるようなこだわりが随所に感じられます。スウェーデンの美術史家であるグレゴール・パウルソンが打ち立てた「日用品をより美しく」というスローガンは北欧独特のデザインの基盤でもあり、アアルトのデザインにも通底しています。

©︎FI 2020 - Euphoria Film

見た目の美しさだけでなく、日常の生活そのものを美しく、豊かにしていくデザイン、と言う概念は、例えば人間の目に眩しさを与えないように光の質を重視した照明のデザインであったり、スチール素材のもつ冷たさを失くすべく木材加工技術の開発に力を注いだり、と言ったアアルトの姿勢に現れており、時代を超えて多くの人の心を掴んでいる魅力の一部でもあります。「幼い頃、アアルトが設計した図書館で過ごし、彼の建築の虜になった」と語る、ヴィルピ・スータリ監督も、そんなアアルト作品に強く魅了された者の一人です。

ヴィープリの図書館 ©︎FI 2020 - Euphoria Film

ヴィープリの図書館 ©︎FI 2020 - Euphoria Film

10月13日より全国公開が始まった映画『アアルト』(ヴィルピ・スータリ監督作品)は、アルヴァ・アアルトの人生と、彼と人生を共にした二人目の妻たちとの愛を描いた物語です。建築家としてだけでなく、インテリア、家具、照明、ガラス器、テキスタイルなど、デザイナーとしても多くの作品を残してきたアアルト。その数は建物だけをとっても生涯で200以上を超えています。

スツール60 ©︎FI 2020 - Euphoria Film

アアルトベース ©︎FI 2020 - Euphoria Film

ルイ・カレ邸 ©︎FI 2020 - Euphoria Film

今回の映画では、「スツール60」や「アアルトベース」と言ったアイコン的アイテムの数々はもちろん、自然との調和が見事な「ルイ・カレ邸」をはじめ、「ヴィープリの図書館」、「ベイカーハウス学生寮」、「ユヴァスキュラ教育大学」等々、多くの名建築を美しい映像と編集で鑑賞することができます。そのマスターピースを映画館の大きなスクリーンで眺めるだけでも非常に価値の高い体験ができると言えるでしょう。

二人の妻、アイノ・アアルトとエリッサ・アアルト 愛の物語

そして、今回の映画の特徴の大きな点は、アアルトと、公私共にパートナーでもあった二人の妻たちのエピソードを主軸に置くことで、それぞれがどのような人間だったのか、どういった関係性の中で、情熱や悲しみを抱いてその時代を生きていたのかを、彩り鮮やかに人間模様として描いているところです。

©︎Aalto Family

建築やデザイン、時代背景についての知識を伝えるだけでなく、ある時代にそこに生きていたヒトとしての彼らの心に近づくことは、彼らが生み出してきた建築やデザインをより深く理解する手助けになるのだと言うことが映画全編を通して伝わってくるかのようです。劇中では貴重な家族写真やアルバム、過去のインタビューや個人的にやり取りされていたかつての手紙などの資料がとても精巧に組み込まれており、どのような人柄だったのか、どう言ったユーモアを持って愛を伝え合っていたのか、   なども窺い知ることができます。本作はフィンランドのアカデミー賞と言われるユッシ賞の音楽賞と編集賞を受賞していますが、観ればそれも納得の作品です。

©︎Aalto Family

映画の中で語られる彼らには自分たちと変わらない人間らしさが感じられ、きっと映画を見終わった後は、以前とは違った目線でアアルトの作品を見てしまうでしょう。それぞれの作品がいっそう愛おしく感じられる新たな視点を手に入れることができるのではないでしょうか。

映画『アアルト』

フィンランドが生んだ世界的建築家でデザイナーのアルヴァ・アアルト (1898-1976)が今年 2023 年に生誕 125 年を迎えたことを記念して公開される本作。 不朽の名作として名高い「スツール 60」、アイコン的アイテムと言える「アアルトベース」、そして自然との調和が見事な「ルイ・カレ邸」など、優れたデザインと数々の名建築を生み出した彼のデザイナーとしての人生を突き動かしたのは、一人の女性だったー。

 

2023年10月13日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、UPLINK 吉祥寺、シ ネ・リーブル梅田、伏見ミリオン座、2023年10月28日(土)より、 東京都写真美術館ホール ほか全国にて順次公開。

 

監督:ヴィルピ・スータリ(Virpi Suutari)

制作:2020年 配給:ドマ 宣伝:VALERIA

後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会 協力:アルテック、イッタラ

2020年/フィンランド/103分/(C)Aalto Family (C)FI 2020 – Euphoria Film

公式HP:aaltofilm.com

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ethica編集部

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