(第7話)「食品ロスのこと」 キコの「暮らしの塩梅」
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第7話)「食品ロスのこと」 キコの「暮らしの塩梅」

「私によくて、世界にイイ」が実現できる、エシカルな暮らし・食のカタチってなんだろう。仕事に家事に育児に…日々生活を回すだけでも大変な私たちにとって、新しく行動を起こすのはエネルギーも時間も使うし、ハードルが高く感じてしまうもの。

でも日々の暮らし、一日三度のごはんを、少しでも”良い”ものにできたら?

当たり前の毎日のなかで、大切な家族も、世界も、そして私自身もほんのちょっぴり幸せになるような選択をしていけたらいいなと思うのです。

【連載】キコの「暮らしの塩梅」を読む>>>

第6話では、わが家のハレとケのごはんをご紹介させていただきました。

今回は食にまつわる問題へ目を向けるきっかけとなった「食品ロス」についてお話します。

食にまつわる問題へ目を向けるきっかけとなった「食品ロス」

「もったいないなぁ、まだ食べられるのに…」

一口かじっただけのウィンナーに手もつけていないピザ、端に寄せられた野菜。

ビュッフェスタイルのレストランの食器返却口で、お客さんが持ってきたお皿の上に残るたくさんの食べ物を見て、悲しいような悔しいような複雑な気持ちでいたことを覚えています。

 

高校生の頃、授業の一環で「食と農」をテーマとした体験型農園へ労働実習に行き、

そこのビュッフェレストランで、料理の盛り付けやピザ焼き、お客さんの案内などを体験させてもらっていた時の話です。

 

野菜やお肉がどうやってできるのか、生産から加工、消費のプロセスが見えて実際に体験もできるその施設は、連日多くの人で賑わう楽しさに溢れた場所でした。

 

生産と消費のつながりの大切さを謳う施設を訪れるお客さんであるにも関わらず、

自分の食べる量を調整できるはずのビュッフェでさえ

こんなにたくさんの食べ残しをしてしまうものなのか、、と

驚きとショックを隠せませんでした。

食品廃棄物の問題

日本の食品ロス(本来食べられるにもかかわらず捨てられたもの)は年間約643万トンと推計されています。(2018年度推定値・農林水産省※)

製造、流通、加工の過程で発生する規格外品や、スーパーや外食産業で発生する売れ残り食べ残しなどによるものも多くありますが、約643万トンのうち半分は買いすぎ、食べ残しなどによる“家庭から出るもの“だということがわかっています。

この数字は世界全体の食糧援助量の約2倍であり、もし世界中で食品ロスが軽減すれば

飢餓の問題はなくなるとも言われています。

 

また食品の生産から消費の間には、多くの環境資源の使用や輸送に伴う二酸化炭素の排出など、さまざまな環境負荷がかかっています。

食料自給率が40%を切る日本は、多くの輸入食料に頼っており

食料の消費が環境に対して与える負荷に大きく加担しているとも言えます。

 

食料ロスをきっかけに食にまつわる問題の深刻さを知り、

まずは暮らしのなかで出来ることはないかと考えるようになりました。

日々の暮らしの中で私たちにできること

高校生の私は、お庭の一部を開墾し畑を作って

ごはんを作るときで出た野菜くずをコンポストで堆肥にして畑の土に混ぜて使い、

その土で野菜を育て、収穫した野菜で出た生ゴミをまた堆肥にして…と

おうちで出るゴミを減らし循環させることができないか、試行錯誤していた思い出があります。

 

今の住まいは一軒家ではないのでコンポストはしていないのですが、

生ゴミを減らす方法として、無農薬野菜なら栄養豊富な皮ごと使ったり、

キャベツの外皮や人参のヘタ、玉ねぎの皮などは冷凍してある程度溜まったら

ローリエと一緒にコトコト煮込んで、スープストックにしたりしています。

 

週に一度野菜の宅配を頼んでいるので、配達日前や買い物に行く前には

残っている野菜を刻んで具沢山のスープやポタージュを作っています。

忘れて腐らせてしまう野菜が減り、冷蔵庫もすっきりして気持ちが良いです◎

その他にも、お家でも少しの心がけで無駄を減らせる工夫はたくさんあります。

 

・買い物に行く時は、冷蔵庫をチェックしてから行く。

・スーパーの食品ロス対策として、すぐに使うものは賞味期限が近いものを選ぶ。

 

・買ってきたものは新鮮なうちに湯がいたり、小分けして冷凍保存する。

(忘れないように定期的に冷凍庫の中を整理する)

 

・料理をする時は、残っている食材・期限が近い食品から使う、食べきれる分だけ作る。

 

基本的なことばかりのようにも思えますが、家庭から出るゴミが半数以上を占める食品ロス。

ついつい買いすぎてしまったり、買っていたことを忘れて賞味期限が過ぎてしまっていたり。

「もったいないなぁ、、」と思いながらも、処分することって案外多いと思います。

そんな小さな積み重ねが、積もり積もって何百万トンという数字になっているのです。

 

だからこそ、ひとりひとりのレベルで無駄を減らす工夫をすることに大きな意味があると言えます。

お金さえ払えばいつでもどこでも欲しい食べ物が手に入る今。

買いすぎて腐らせてしまっても、口に合わなくて残しても

対価として得たものなのだから、それを残そうが捨てようが

お金を支払った者の自由だし権利だと言うこともできます。

 

でも、もしそれを作ってくれた人が大好きなおばあちゃんやお世話になったお隣りの人、

知り合いの農家さんだった場合はどうでしょうか。

 

少なからず、心の中に申し訳ないなと思う気持ちが浮かぶと思います。

あらかじめ食べられる量を伝えたり、傷む前に誰かにおすそ分けしたり、

長く保存できる方法を考えたりと工夫するかもしれません。

 

どんなに世の中が便利になっても、「食べる」ことは誰かの手を介して実現しています。

 

生産から消費のプロセスが見えにくい社会ですが、

目の前の食べ物が、どこで、どうやって誰の手によって作られたのか。

それを「知ること」「想像してみること」が、

作る人にとっても、地球環境にとっても、私たちにとっても“良い”選択につながるのではないでしょうか。

少しシリアスな話になってしまいましたが、、

あらためて振り返ると、食品ロスの問題を目の当たりにしたことはわたしにとって一つの原体験であり、今のような生活を大切にしようと思ったきっかけでもありました。

 

畑を作ったり動物性食品を一切断ってみたり、問題意識を持ってストイックに取り組んだ時期から、この連載のテーマでもある「いい塩梅」をなぜ心がけるようになったのか、「Food」最終回でもある次回、お話しできればと思います。

 

 

(※注)食品ロス量 農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/190412_40.html

【連載】キコの「暮らしの塩梅」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【ethica Traveler】 連載企画Vol.7 宇賀なつみ (終章)『Returning to TOKYO~サステナブルなフライト〜』
独自記事 【 2024/4/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
[エシカ編集部 体験企画]環境や人権に配慮したエシカル素材で心地の良いナチュラルな香りと時間を実感「Care me(ケアミー)」のインバスグッズ
sponsored 【 2024/3/29 】 Health & Beauty
一日の終わりのバスタイムは、その日の自分をとびきり労って心とからだを回復させてあげたい愛おしい時間。そんなセルフケアの習慣にほんの少し、地球環境や自分以外の人にもちょっと良いアクションが取れたら、自分のことがもっと好きになれる気がしませんか? 今回ご紹介するのはエシカ編集部が前々から注目していた、エシカルな素材を使って...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.6 宇賀なつみ (第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ
独自記事 【 2024/3/27 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
そろそろ知っておかなくちゃ! 水素のこと。森中絵美(川崎重工)×中村知弘(UCC)
sponsored 【 2024/3/26 】 Work & Study
2023年の記録的な猛暑に、地球温暖化を肌で感じた人も多いだろう。こうした気候変動を食い止めるために、今、社会は脱炭素への取り組みを強化している。その中で次世代エネルギーとして世界から注目を集めているのが「水素」だ。とはいえまだ「水素ってどんなもの?」という問いを持っている人も多い。2024年2月に開催された「サステナ...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
独自記事 【 2024/2/28 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【ethica Traveler】連載企画Vol.3 宇賀なつみ (第2章)W サンフランシスコ ホテル
独自記事 【 2024/2/14 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.2 宇賀なつみ (第1章)サンフランシスコ国際空港
独自記事 【 2024/1/31 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

お気に入りの街 ケルン
パネルディスカッション「グローバル企業に学ぶサステナブル・ビジネスの実践法~課題を乗り越えるための方策とは」 フィリップ モリス ジャパン・濱中祥子さん

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます