2世代が近くに住んで助け合う 新しいライフスタイル「近居」
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2世代が近くに住んで助け合う 新しいライフスタイル「近居」

(左)イギリスやフランスのニュータウンの知識を参考に、東京大学の高山英華研究室が主導した、戦後日本の代表的なベッドタウン「高蔵寺ニュータウン」 右上から「千里ニュータウン」「多摩ニュータウン」「浦安ベイタウン」  

核家族化がより一層進み、「個の社会」の様相が強まる中、今改めて多世代が協創する社会に注目が集まっています。

その一つのきっかけとなったのは、今も人々の記憶に残る平成23年3月の東日本大震災でしょう。

平成25年に実施された三井不動産の「子育て世代(賃貸居住)の住み替え意識調査」によると、「近くでお互いの様子を見られるようにしたい」「連絡ツールが断たれた場合でも会いに行ける距離を意識し始めた」という意見が多く見られ、震災という未曽有の事態を経験して、家族の絆や歩いて帰れる距離に身内がいるという安心感が何ものにも代えがたいということが再認識されているようです。

地方自治体も「近居」を積極的に支援

こうした中、お互いの世帯が助け合って生活することのできる住居形態「近居」を積極的に推進しようという動きが顕著になってきました。

国も今年3月に閣議決定した「少子化社会対策大綱」の中にも『世代間の助け合いを目的とした「三世代同居・近居」の促進』を盛り込んでおり、これに呼応する形で群馬県前橋市(2世代近居・同居住宅支援事業)、神奈川県二宮町(同居・近居推進事業)、秋田県男鹿市(親元近居同居支援制度)などの各地方自治体でも、平成27年から近居助成に対する取り組みを開始することとしています。

一方、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)でもこうした流れを受け、全国10エリアで、UR賃貸住宅とUR賃貸住宅を含むあらゆる住宅の近居に対して、新しくUR賃貸住宅に入居する世帯の家賃を5年間5%割り引くサービス「近居割ワイド」をこの9月からスタートしました。

これにより、子育て世代には、

「子供の急な病気・ケガの際にも助けてもらえるので安心」

「祖父母が身近にいることが子供にとって良い経験になる」

また、祖父母世帯には、

「子供が近くに住んでいると、いざという時に安心」

「孫の成長を間近に見ることができる楽しみ」

などといったメリットが得られることになります。

同機構では、近居が促進されることで、今後も「多様な世代が生き生きと暮らし続けられる町づくりの実現」を目指していくとしています。

UR都市機構による近居に関するプレス向けセミナーにて、発表された「近居割ワイド」

「持続可能な町づくり」と「多世代との共創」

先日、UR都市機構では近居に関するプレス向けセミナー「近居会議~変化する家族と住まいを考える~」を開催し、同機構が取り組んできた近居支援の取り組みや今後の可能性などについて発表しました。

左から、フリーアナウンサーの根本美緒氏、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の平山洋介教授、UR都市機構の花岡洋文副理事長、UR都市機構本社住宅経営部の由利義宏次長

近居に関するプレス向けセミナー「近居会議~変化する家族と住まいを考える~」パネルディスカッションの様子

セミナー終了後、ethica編集長の大谷が、同機構本社住宅経営部次長の由利義宏さんにお話を伺いました。

大谷 「『持続可能な町づくり』『多世代との共創』ということが今日のテーマだったと思うのですが、とても興味深く拝聴しました」

由利  「ありがとうございます。昔でしたら同じような部屋を作って、それを貸し出していればよかったのですが、時代が変わって団地をどういう形で再生していくかということを考えた時、部屋の作り方、料金設定はもちろんですが、それ以上にいろいろな工夫をしていわゆるミクストコミュニティを作っていく必要があると感じています」

大谷 「今、さまざまな業種で商品の細分化が進んでいます。それはURも同じということですね?」

由利  「ええ、そうです。住宅の作り方はもちろん、ソフト面も含めてそういう方向を目指すのは必然でしょうね」

大谷 「今後、URとしては、どのような方向性を考えていらっしゃいますか?」

由利  「団地で育ったお子さんが、いったん離れたとしても何年か経って自分が子育てをする年齢、つまり親御さんが団地に入った年齢になった時、団地やその周辺に帰ってきたいと思えるような、そんな団地を作っていきたいというのが私が持つ、これからの団地のイメージですね。それは、ある意味でサスティナブルとか、循環する社会といえるかもしれないですね」

 

UR都市機構の花岡洋文副理事長 パネルディスカッションにて

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

近居に関するプレス向けセミナー「近居会議~変化する家族と住まいを考える~」の様子はethicaのバックナンバーにてご紹介しています。

http://www.ethica.jp/20490/

今回のプレスセミナーの司会進行を務めたフリーアナウンサー根本美緒氏の公式ブログ(ネモログ)はこちら

http://ameblo.jp/nemolog0210/

ーーBackstage from “ethica”ーー

個別インタビューでは「生まれ育った町の風景を懐かしんで、いつかは団地に戻ってきたくなる、そんな団地を創っていきたい」という情熱も由利様にお伺い出来ました。

記者 清水 一利(しみずかずとし)
1955年千葉県市川市生まれ。明治大学文学部(史学地理学科日本史専攻)を卒業後、1979年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通パブリックリレーションズ)に入社。クライアント各社のパブリシティ業務、PRイベントの企画・運営などに携わる。1986年、同社退社後、1987年、編集プロダクション・フリークスを主宰。新聞、雑誌(週刊誌・月刊誌)およびPR誌・一般書籍の企画・取材・執筆活動に従事。2012年「フラガール3.11~つながる絆」(講談社)、2013年「SOS!500人を救え~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)を刊行。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

清水 一利

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