日本環境設計・岩元美智彦さん「グローバルに認められるサスティナビリティへの取組み2020」
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日本環境設計・岩元美智彦さん「グローバルに認められるサスティナビリティへの取組み2020」

『ethica(エシカ)』3月号のテーマは、「暮らしとエシカル」です。

日本環境設計は地球の未来のためにさまざまなものをリサイクルする仕組みを作っている会社です。

2月19日・20日の2日間、パシフィコ横浜で開催された「サスティナブル・ブランド国際会議2020横浜」(SB 2020 YOKOHAMA)では多くのセミナー、ディスカッション、ワークショップが繰り広げられ、さまざまな貴重な提言や発表が紹介されました。

その中で「グローバルに認められるサスティナビリティへの取組み2020」と題されたセミナーでの日本環境設計・岩元美智彦さんの発表をご紹介します。

同社が今、何を目指してどのようなことをやっているのか、早速お話に耳を傾けてみましょう。そこには「暮らしとエシカル」のヒントが隠されているかもしれません。

(記者:エシカちゃん)

①「技術」

日本環境設計は持続可能な社会を実現させたいとの思いから会社を設立し、これまで3つの考え方に基づいて事業を進めてきました。

まず1つ目は「技術」です。

皆さんに服やペットボトルはいったい何回リサイクルできると思いますかと聞くと、1回または2回と答える方がほとんどです。しかし、最先端の技術を用いると、何回でもリサイクルできるようになるのです。

そこがテクノロジーのいいところで、何回でもできるということがサステナビリティの実現という観点では重要です。せっかくリサイクルしても最終的には燃やしてしまう、それでは循環型社会のあるべき姿とは言えません。やるのであれば永久的なリサイクルを目標にしなければなりません。

当社は今、ケミカルリサイクルの手法を用いているのですが、このケミカルの技術というのが非常に鍵になります。衣類やペットボトルの工場を持ち、そこでいろいろな可能性を見出していかなくてはいけないことは分かっていても技術がなかなか追いついていないと理想を実現するのはとても難しいです。そんななか、現在こうした工場を持っているのは国内では当社しかありません。

私たちは、この工場でリサイクルによりできた素材を、石油などの地下資源に対して「地上資源」と呼んでいます。地上資源でできた素材の品質が石油と同じレベルになっていくということで、いろいろなものが作れますし、CO2の排出量も石油のそれに比べ削減できるという点で技術を高めていくのがひじょうに大事だというのが1つ目の考え方です。

②「リサイクルに興味のない人に、いかにして参加してもらうか」

2つ目はリサイクルに興味のない人に、いかにして参加してもらうかということです。

例えばリサイクルに興味を持っている人やそれに携わる人たちだけが参加しているというのではいつまで経っても循環型社会は実現しません。

消費者の目線でいきますと、A社はA社のリサイクル、B社はB社のリサイクルと、それぞれ会社ごとにバラバラでしたら消費者は参加しづらいですよね。だとしたら、ここはみんなで手をつないでやっていきましょうと一丸になって統一化をしていく。この構築には相当時間がかかりました。

③「より多くの人に参加してもらえるか」

さらに、より多くの人に参加してもらえるかを考え、キーワードを「正しいを楽しい」にしました。これが3つ目の考え方です。

リサイクルや循環型社会の話をすると、1回は話を聞いてくれますが、次はありません。行動まで結びつかないのです。行動してもらうには「正しいを楽しい」がどうしても必要なのです。ただ単にリサイクル回収ボックスを置いておくだけなのと、一緒にワークショップをやるのとではリサイクル品の集まりが大きく違いますから。

これまで当社が実施したイベントの中で、話題になったのが「バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンを皆で動かそう」というイベントです。普通はリサイクルに参加してくださいと呼びかけても、なかなかリサイクルで人を集めるのは難しいものですが、このイベントは古着を持ってくるとデロリアンに乗れて写真を撮ることもできるとあって、1時間待ちが当たり前なんですね。そして、待っている間に気づきとか回収導線とか環境導線ができるわけです。

ですから、楽しいことをやってそれが環境にもいいという正しいことになる。そういうプログラムをたくさん考えたいと思います。

私たちがやりたかったことは、みんなで作る「地上資源の経済圏」でした。消費者がいて回収の拠点があって、技術があって地上資源ができて、メーカーがいて、それらを横につないでいきます。消費者は毎年500万人以上は参加していますが、これって環境にいいよねとか、楽しいことを皆でやるとやっぱり夢があるよねとか、そういう人が参加してくれています。

海洋ごみでできたストールをファーストレディーにプレゼント!

技術はうちだけではなくて私たち1社だけではなく、別の企業さんのモノを作るプロセスを一部改良するから実現できることもあります。1社で1から作るだけでは限界があります。ですから、いろいろな企業にお願いをして、一部を貸してほしいとか技術開発を一緒にやろうということで技術をつなぎます。

そうすると地上資源が出てきて、メーカーは品質がいいので安心して使います。そして、地上資源で作った商品が店頭に並びます。

そうなると、消費者は自分たちが使わなくなったものを原料に地上資源でできたA商品と地下資源でできたB商品が同じ価格だとしたら、どっちを買うでしょうか? 当然Aを買いますよね。すると、それがまた回収拠点に集まってきます。

回収拠点に人やモノがたくさん集まってくると、今度は技術に人やお金が投資されて、また地上資源がたくさんできて多くのメーカーが参入してきます。私たちは、こういう地上資源の経済圏を作りたかったのです。

今までは地下資源を使うことを前提にモノ売りやサービスがありましたが、そろそろ変えるべき時期がきたと思っています。異常気象になったり、資源の枯渇の原因にもなりますから、犠牲の上の経済を何年も続けることはできません。いろいろな人や業界とお話をして、地上資源の経済圏がようやくできつつあります。そうすると経済と環境が両立するようになるわけですね。

地上資源を使った商品が少しずつ店頭に並び始めました。消費者がそれを買えば買うほど経済が変わりますし、買えば買うほどサステナビリティ化に勢いがつきます。こんなふうに経済と環境と平和をイコールにしたかったのです。

みんながつながって楽しくなると、技術は進化します。つながっていくことはとても大事です。去年G20がありましたが、あの時、海洋ごみを回収して集めたペットボトルを原料に最先端のテクノロジーを使ってファーストレディー用のストールを作ってプレゼントしました。それには、本当に海洋ごみでできているの?とビックリしていただきました。

テクノロジーや楽しさでみんなをビックリさせる。いろいろな企業や団体と連携してTシャツを作ったり、いらなくなったモノがこんなに素敵な商品になる。Tシャツのアート展をして子供がわんさか参加する。こういう楽しいイベントをすることがすごく大事なんですね。

環境にいいTシャツを買うということも大事ですが、楽しいという点でもっと大事なのはどんな経緯を経て商品がつくられたのかということです。将来の構想としてうちの商品をスマホでピッとやると、いつ頃リサイクルされたのかなどの情報がわかるようにしたいと考えています。そうなると、そのTシャツに対する思いがより強くなると思っています。

環境の商品は楽しい、分かりやすいと感じさせることはとても大切です。1社だけではできないので、いろいろな会社と連携して夢を創造していきたいと考えています。

実現したいと思っているのはこんな商品です。有名アーティストが着用していたTシャツをリサイクルしてできた商品のタグに、スマホをピッとやるとそのアーティストの曲が流れるんです。こういうことができれば循環型社会が楽しくなるのではないでしょうか?

フランスでは売れ残りの廃棄を禁止にする予定も

フランスは2023年から服をはじめとした売れ残りの廃棄処分を禁止にする予定です。それは、リサイクルしなさいということですね。自分たちの便利な生活の裏側では資源の争奪戦争が起きています。循環型社会が実現すると、そうした争いを止めることができると私は思っています。

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

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