真のエシカルとは? 日本初の包括的指標「JEIエシカル基準」策定
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
真のエシカルとは? 日本初の包括的指標「JEIエシカル基準」策定

日本エシカル推進協議会 生駒芳子 副会長

「エシカル(倫理的な)」という言葉や概念の認知が広まる一方で、「真のエシカル」な取り組みや商品、サービスがどういうものなのか、消費者はもちろん、提供し供給する側の企業も明確に認識できていないケースが少なくない。

地球の環境と社会を深刻な危機から救うことを目的に有志の専門家で2017年に設立された一般社団法人日本エシカル推進協議会(JEI)は、エシカルの総合的基準「JEIエシカル基準」を策定。10月13日、記者会見で発表した。これまで曖昧だったエシカルの定義を明確にし、様々な商品やサービス、ブランド、企業がエシカルであることを総合的に確認、示すための日本初の基準だ。

日本エシカル推進協議会 中原秀樹 会長

8分野(43の項目)で評価

自然環境保全、人権や消費者の尊重、動物の福祉・権利といった8分野について、それぞれ4~7の課題があり、全体で43の項目から構成されている。自分たちの現在のエシカル度を客観的に示すためのモノサシで、第三者による認証ではない。自己評価ではあるものの、対外的にその評価を示す際には客観的なエビデンスを揃え、求めにより開示する必要がある。

「エシカル」という概念全体を定義

エシカルに関連するいくつかの分野や原材料については国際的な第三者認証制度もあるが、特定の分野に限定しているものが多く、「エシカル」という概念全体をカバーできるものではなかった。また取得や維持には多額の費用がかかり、中小企業やなど小規模な事業者にとって利用するのが難しいのが実情だ。「真のエシカルとは何か」を幅広くカバーする定義は世界的にも存在しないために、「エシカル・ウォッシュ」と呼ばれる見せかけのエシカルが疑われるような取り組みや商品もある。同基準で客観的なエシカル度を提示することで、エシカル・ウォッシュを排除することもねらいだ。

日本エシカル推進協議会 足立直樹 氏

会見の質疑応答では、「エシカルとサスティナブルの違いは?」という問いが。足立理事は「多くが重なる。その上で、エシカルは『命』に関わる部分がより重んじられる」とし、ファッションや食品など、消費者一人一人の身近な生活を支える事業活動、商品やサービスについて、サスティナビリティだけでなく人間の命、動物の命を考えているのかが重要と説明した。

日本エシカル推進協議会 生駒芳子 副会長

同じく理事を務めるファッションジャーナリストの生駒芳子さんは「エシカルの認識を広めていくためには、衣食住という身近なところから広めていくことが重要」とし、さらに自身の専門分野であるファッションについては、消費者庁、環境省、経産省といった省庁がそれぞれの管轄においてサスティナブルな取り組みを進めており、「今年はまさに『サスティナブルファッション元年』と言える年になった」と話し、これからについてこう続けた。

「特にZ世代にとってエシカルは、もはや当たりのことという認識。さまざまなネットワークとつながり、クリエーターの力を借りて発信していけたら」

今回のJEIエシカル基準は、企業や自治体などでの活用が期待されるが、HPで公開されており、一般消費者も自由に見ることもできる。生駒さんは「内閣府の消費者委員会の委員として消費者被害の問題に向き合う中で、『いかに自立した消費者を作っていくか』を常に考えている。一般の消費者の方々もこのJEIエシカル基準を学ぶことで、自立するための情報を得られ、エシカルに配慮した企業やブランドの商品、サービスを買うという選択ができる。企業向けであるだけでなく、消費者の方々のための基準としても活用できるのでは」と期待を寄せている。

日本エシカル推進協議会 岡田千尋 氏

基準策定に関わった専門家が月1回講義する「JEIエシカルアカデミー」をオンラインで開催。また、今後はアワードの創設なども検討しているという。

JEIエシカル基準は、JEIのHP(https://www.jeijc.org/ethical-standard/20211013-1/)で公開されている。

記者:中津海 麻子

慶応義塾大学法学部政治学科卒。朝日新聞契約ライター、編集プロダクションなどを経てフリーランスに。人物インタビュー、食、ワイン、日本酒、本、音楽、アンチエイジングなどの取材記事を、新聞、雑誌、ウェブマガジンに寄稿。主な媒体は、朝日新聞、朝日新聞デジタル&w、週刊朝日、AERAムック、ワイン王国、JALカード会員誌AGORA、「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」など。大のワンコ好き。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

中津海 麻子

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
インターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン3 第1章の見どころをご紹介
独自記事 【 2023/10/12 】 Work & Study
2023年10月から配信がスタートした、SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン3!エシカちゃんと、「森キミ」ことモデルの森貴美子さんが、身近な話題や気づきから持続可能なアクションやサステナブルについて考え、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんの案内のもと時空を超えた...
SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組のシーズン3がスタート!
独自記事 【 2023/10/10 】 Work & Study
持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択された2015年から8年。サステナブルやSDGsといった価値観は耳に馴染んできたものの、まだまだ知らないことがたくさんありそうな奥の深い世界です。エシカでは、「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演するSDGsやエシカルに...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
【エシカ独占インタビュー】宇賀なつみ 初エッセイ本『じゆうがたび』刊行記念
独自記事 【 2023/6/19 】 Work & Study
先月、長らく続いていた新型コロナウイルス感染症が5類感染症の位置付けとなったことで、ようやくマスクをはずして外出や旅行に繰り出す人々が増えてきました。旅行や観光業界の中では、近年世界中で注目されているものに「ウェルネスツーリズム」(※)というものがあります。そのトレンドを大々的にピックアップしたイベント、「ウェルネスツ...
インターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2 第二話の見どころをご紹介
独自記事 【 2022/12/5 】 Work & Study
11月7日(月)より配信がスタートした、SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2!「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演して、身近な話題や気づきから、持続可能なアクションやサステナブルについて考えを深めます。今回は、12月5...
SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組のシーズン2がスタート!
独自記事 【 2022/11/7 】 Work & Study
持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択された2015年から7年。サステナブルやSDGsといった価値観は耳に馴染んできたものの、まだまだ知らないことがたくさんありそうな奥の深い世界です。エシカでは、「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演するSDGsやエシカルに...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
【あむんが行く!第1話】 TBSのSDGsプロジェクト!「ミツバチ教室」で蜜ろうキャンドルづくりを体験
独自記事 【 2022/3/7 】 Work & Study
ethica編集部員の娘(5歳)が、様々なエシカルな体験を繰り広げていく、新企画「あむんが行く!」 “あむん”という名前の由来は、紀元前1000年頃より、二千年の長きにわたって栄えたマヤ文明のマヤ語からきています。意味は“森の神”。自然と親和性のある名前を持つあむんが、今後様々なエシカルな体験を繰り広げていきます。娘の...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

(第4話)持続可能な日常生活 【寄稿連載】ビジュアルコミュニケーションから学ぶ ゲッティイメージズジャパン 遠藤由理
読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第4章:歓迎の意を込めて編(第4節)

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます