読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第2節) 「読者」と「ethica編集部」の交流の場(オンラインオフ会)連動企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第2節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第二章は「ベトナムと日常への気づき」と題して、全四節にわたりお送りします。ベトナムでの日常生活をヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第2章 ベトナムと日常への気づき

第2節 ポイ捨て?の幸福学

コロナ禍で大人数の宴会が制限される日々で、いつまたあの楽しい雰囲気を味わえるのだろうか、と物悲しい気持ちになる人も多いでしょう。

そうした非日常的な楽しみを奪われたことで憂鬱になってしまわないように、新たな趣味を始めた人もいるかもしれません。巷では一人キャンプが注目を集めて、2000年代に入り低迷していたキャンプ用品市場がV字回復したようです。私自身も、最近自転車を購入して、一人で土手を走ったりしています。新たな形での「非日常」が求められていると言えるでしょう。

今回は、私たちのウェルビーイングに欠かせない「非日常的体験」にフォーカスを当てて、ベトナムでの気づきを共有したいと思います。

キーワードは「ポイ捨て」。ゴミをポイと捨ててしまうことが、ウェルビーイングに結びつくという不思議なベトナムでの体験です。

街のレストラン

前回のベトナム滞在でお世話になった友人宅にホームステイしていた私ですが、旧正月のホリデイシーズンであっただけに、色々な親戚の集まりにも連れて行ってもらいました。

今思えば、日本から来た訳の分からない若者を、親族との宴会に混ぜてくれたことには、とてつもない懐の深さを感じます。そういう「分け隔てなさ」もベトナムの良いところだったりします。

さて、「晩御飯を食べに行くぞ」と突然連れていかれた私ですが、会場に着いてビックリ。20人以上の人がいました。小さな子どもから、おじいさんおばあさんまで、幅広い年齢層の親戚が大集合です。

挨拶回りをする暇もなく、丸テーブルに案内され、宴会がスタート。左隣の知らないおじさんが、小皿におかずを満点盛ってくれたと思えば、今度は右隣りの知らないおじさんが、コップにビールを並々注いでくれます。ちなみに、ベトナムではハイネケンが大人気で、大きな集まりの時は必ずハイネケンが置いてあります。

ベトナムのハイネケン

モー、ハイ、バー、ヨー!という掛け声で乾杯するのが大好きなベトナム人。目の前のビール缶の山はみるみるうちに消えていきます。それと同時に聞こえるのが、「カラン」という音。最初、私はそれが一体何の音なのかわからなかったのですが、ついに隣から音が。

そう、それが缶を床に落とす「カラン」という音です。ベトナムの人々が、飲み終えたビール缶を床にポイと捨てているのです。

床を汚すなんて!と思い、友人を呼び出して聞いてみると、「ベトナムではゴミは床に落とすんだよ。レストランなら床がゴミで埋まってるほど人気店だし、宴会ならそれほど盛り上がったってこと。もちろん後で拾うけどね」とのこと。

もちろん自宅ではあまりやらないけれど、こうした宴会のときは、空き缶は床に捨てるらしいのです。後でちゃんと掃除すると聞いて、「なら良いか」と思い、私も床に何度かポイ捨てしました。小さな背徳感があって、意外と心地良い。何より、その会に馴染んでいるような気がして、ベトナムの人々と繋がれた感覚がありました。

ベトナムの一般的な家庭料理

一応言っておきますが、このエピソードで、ポイ捨てしてもよい、というメッセージを与えるつもりはありません。むしろ私が注目したいのは、そうした行為を宴会という非日常と結びつけていることです。つまり、普段はしてはいけないポイ捨てを、宴会という場で行うことが、彼らにとって非日常的体験のスイッチを入れる行為なのです。

私たちもそうした非日常のスイッチがあるのではないでしょうか。例えば、お正月のおとそ。お酒を飲んではいけない子供も、口にお酒を少し含むということをします。その行為を通じて、私たちはお正月という非日常的な行事を体験しているのです。

ウェルビーイングにおいては、日常から抜け出す体験が必要です。コロナ前であれば、ライブに行ったり、お祭りに参加したりと、人との関わりの中でそれを実践してきました。しかし、それが出来ない今、私たちは非日常的な体験をもたらすスイッチを意識的に見つける必要があります。

何であっても構いません。ライブに行くのが好きな人なら、自宅で公式グッズを身に纏ってみると、非日常的な体験のスイッチが入るかもしれません。お洒落をして表参道に行くのが好きな人なら、クローゼットの中の一番お洒落な服を着て、家で一日過ごすのも良いかもしれません。

十分に動き回ることが出来ない今、過去に非日常的体験をもたらしたスイッチを実践してみると、非日常世界と繋がれます。ウェルビーイングとは、そうした些細な取り組みの積み重ねで、築かれていくものでしょう。

あなたにとって、非日常をもたらすものは何ですか?日常に憂鬱を感じているあなたも、それを意識的に行ってみると、生活にメリハリが出るかもしれません。

旧正月の飾り花を売る露店

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話

題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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