(第25話)未来へつながる豊かな社会を次世代へ 【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」 山々に囲まれたのどかな八ヶ岳を巡りながら「私によくて、世界にイイ。」ライフスタイルのヒントを再発見
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(第25話)未来へつながる豊かな社会を次世代へ 【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」

埼玉で高校教員として、音楽を教えていた藤岡久美子さんは、早期退職して20年前に八ヶ岳に移住。その後、障害をもつ保護犬の里親としてワンコたちのお世話にかかりっきりの十数年間を過ごします。

やっと自分の時間ができた3年ほど前から地域活動をスタート。“未来を生きる子供たちに、安心安全な給食を”、“今を生きる私たちが食べているものを知ろう”など、食と農の安全や環境・人権問題などをテーマに、自主上映会やイベントを主催しています。

1年前に立ち上げたSNSのグループメンバーは、あっという間に400人越え。藤岡さんの取り組みに、賛同の輪が広がっています。今回は、八ヶ岳の豊かな自然を次の世代へ渡したいと願い、安心して暮らせる地域のあり方を模索する藤岡さんの活動を取材しました。

教員を早期退職、八ヶ岳の美しさに魅せられて移住

20年前、埼玉から八ヶ岳南麓に移住した藤岡さん。もともと山登りが大好きで、八ヶ岳エリアでも縦走登山を楽しんだことがあるのだそう。その魅力について、

「北と南で山容がまったく違うので、さまざまな自然環境が体感できるのが八ヶ岳の一番の魅力ですね。例えば南八ヶ岳は、標高2899mの赤岳を中心に険しい山々が連なった雄大さが満喫できるし、北八ヶ岳に行くと、苔むしたような原生林があったり、池や温泉が点在していたりして、とても神秘的な雰囲気。南北に広がっているので四季折々に、豊かな表情が楽しめるのもここならではですね。そんな八ヶ岳に魅せられて、2002年、愛犬と共に移住を決めました」

南八ヶ岳の険しい山々

当時はまだあたり一帯が小さな村や町に分かれていて、『北杜(ほくと)市』もできていない頃。赤岳に登ったときに、山頂から見下ろした野辺山や清里、大泉村までが箱庭のように美しく、“ここに住みたい”と思ったと言います。

「最初は野辺山に小さな別荘を建て、その頃住んでいた埼玉から週末ごとに通っていました。高校の教員として音楽を教えていたのですが、叔母夫婦が先に移住していたこともあり、早期退職をして、叔母の土地の一角に家を建てさせてもらいました」

八ヶ岳連峰主峰 赤岳

太陽エネルギーで環境に負荷をかけず、快適な暮らしを実現

標高900mに位置する山間部に家を建てるにあたり、藤岡さんがこだわったのが、自然の力を活かした家づくり。

「寒冷地の建築については、建てる前からかなり研究しました。いろいろ調べてたどり着いたのが、愛知県にあるソーラーシステムのメーカーが開発した『ハイブリットソーラーハウス』。一言で言うと、太陽の熱で暖房と給湯を効率よくまかなってくれる太陽熱利用住宅です」

自然の恵み、太陽エネルギーを暖房と給湯に利用して、床下空間から家を丸ごと暖房するのが特徴なのだそう。その仕組みは、屋根の上で集めた太陽熱で熱媒液を温め、それが床下のパイプを循環して家全体を暖めるというもの。余った熱でお湯を沸かすことができ、環境負荷と光熱費の削減にもつながる合理的なシステムです。

「この周辺では太陽光発電の方が圧倒的に知名度があるのですが、太陽光発電は太陽の光をいったん電気に変換する必要があるんですね。それに比べ、ハイブリットソーラーハウスは太陽熱をダイレクトに蓄熱して家中を暖める方式を採用しています。だからエネルギーロスがないんですよ」

藤岡さんのこの選択は、寒冷地における寒さ対策だけが理由ではありません。

「環境問題にも興味がありましたし、何より八ヶ岳の自然を大切にしたい。この豊かさを後世に残していかなければなりません。なるべく自然に負荷をかけず、持続可能な暮らし方をすることが、今を生きる私たちの責任のように思えるんですね」

2匹の保護犬との暮らしを経て、これからは「自分の好きなことをやりたい!」

「3年前までは、保護犬と、白血病の猫の世話に夢中でした」

八ヶ岳に来てから2頭の犬の里親になった藤岡さんはこう言います。

「最初に譲り受けた保護犬ちゃんは、目が見えなくて、下半身が不随。自力排泄ができなかったの。その次の子は歩けたんだけど、目が見えなかったんです。重い障害がある子たちでした。決まった場所で排泄をすることのできない子たちだったので、旅行とか、山登りとか、どこへも出かけられないわけ(笑)」

東京の動物愛護団体から譲り受けた子たち。「これまで大変な思いをしてきた分幸せになって欲しくて引き受けました。 足が不自由だった子には、車椅子を作りました。目が見えなくても一生懸命私を見上げていた姿が忘れられません。 2頭目の子は猫とすぐ仲良しになる優しい子でした」(藤岡さん)

保護犬の里親として最期まで責任を果たし、やっと生活が落ち着いたのが3年ほど前。それを機に、「自分のやりたいことをやろう」と考え、自主上映会を主催。2年前からは、北杜市の給食に関わる取り組みもスタートしました。

ドキュメンタリー上映を通して、メディアが発信していない「真実」を伝えたい

世の中には私たちが知らなくてはいけない事象の中に、メディアが伝えない、伝えたくない、伝えてはいけない、いわゆる「不都合な真実」があります。たくさんある「不都合な真実」の中から、少しでもみんなと共有したいと思い、2020年に「北杜自主上映会」を立ち上げました。

そして翌年2021年、世界的にも関心の高まっている、食と農の問題とオーガニック給食にフォーカス。”北杜市の給食をオーガニックに”というコンセプトで仲間と『いのちをつなぐ給食へGO!in 北杜』を発足。それぞれ、Facebookのグループメンバーが350人、450人と集まりました。

「1日3食のうち、給食は子供たちにとって大事な1食です。発育・発達の重要なこの時期には、安全な食べものからしっかり栄養を摂取するのが大前提です。子供たちに安全なものを食べさせなければいけない、と仲間を集って活動を始めました」

「給食は、安全でなくてはならない」。子供の食の安全を守るのは、大人の責任でもある。イラストは藤岡さんの作品

「そもそも給食って安全ではないの?と皆さん思うかもしれませんが、たとえば、コッペパンやロールパンなど、学校給食で提供される多くのパンの原材料には、輸入小麦が使われていることが多いため、グリホサート(残留農薬)やポストハーベスト農薬の問題が指摘されています。また牛乳も同様で、牛がどのような飼料を食べて育ったのか、私たち大人が、子供に与える前にきちんと知っておく必要があるでしょう」

牛がどのようなエサを食べているのか。消費者が把握するのは難しいかもしれないけれど、みんなが関心をもつことがとても大事だと藤岡さんは考えています。

たとえば牛の飼料として代表的な『穀物とうもろこし』(私たちが食べるとうもろこしとは別のもの)は、日本の場合、ほぼすべて海外からの輸入に頼っていて、その9割がアメリカ産。アメリカでは約9割のとうもろこしが遺伝子組み換え(2012年米国農務省調べ)とされています。家畜の飼料だけでなく、食用油やコーンスターチなどの加工食品の原料にも広く使われています。

世界では、遺伝子組み換え作物を食べることで、不妊や免疫疾患など、さまざまな健康被害が報告されていますが、残念ながら、日本のメディアで取り上げられることはほとんどないのが現状と言えます。

「いのちをつなぐ給食」賛同の環が、官民合同で拡大中

「八ヶ岳エリアでは、ほぼ自家農場の牧草だけを飼料として育てた牛から搾乳された牛乳も販売されていますが、一般的には輸入の配合飼料を使用しているところが多いようです。その中には遺伝子組み換えのとうもろこしが入っていますから、飲めば間接的に遺伝子組み換えを摂取していることになります」

子供たちはまだまだ発達途上。今食べているものは、将来の健康状態にも影響を与えます。近年、子供のアレルギーや偏食、発達障害、精神疾患などが増えていると言われますが、昔の食生活にはなかった加工食品や遺伝子組み換え食品、人工的に開発された添加物などの摂取との関連を指摘する研究結果も報告されているようです。

「外国からの食料依存の問題など、今、食の環境が大きく変化しています。そんな中で、我々大人たちが食の知識を深め、安全なものを選ぶ目をもつことが大事だと感じます。牛乳は必ず摂取しなければならないものではありませんし、個人的に、パンなどを買う際には原料に国産小麦を使用しているものを選ぶようにしています。学校給食にも、できるだけ地産地消のオーガニック食材を使用してほしいと思っていますし、そうすることで、地域の活性化にもつながっていったら良いなと考えています」

もともと北杜市はオーガニックや自然栽培の農家が多く、行政もオーガニックを中心に地産地消を進めていく機運が高いそうです。とりわけ北杜市の市長さんは、オーガニック給食に協力的というから頼もしい!

「いのちをつなぐ給食」の賛同の環(わ)は、官民合同でじわじわ拡大中です。

知ることから始めよう!観て、聞いて、話し合う。上映会が地域のコミュニケーションを活性化

まずは私たちが、「身近に起こっている問題に気づくことが第一歩」と藤岡さん。一人でも多くの人が、食や環境問題などを知るきっかけになればいい…。そんな気持ちから、さまざまなドキュメンタリー映画の自主上映会を開催してきました。過去3年間で公開された作品は10作品。

「八ヶ岳の自然が大好き」と語る藤岡さん。豊かな環境を守り、次の世代へ美しいバトンを渡したいと願う。ご自宅の玄関には、自主映画の上映会で取り上げたドキュメンタリー映画のポスターなどが飾られている。

2023年2月19日には、文化人類学者の辻信一氏を迎えての『君の根は。(大地再生に挑む人々)』の上映会を予定

上映会の後には毎回参加者による意見交換会が行われます。「知らなかった」、「ホントはそうだったんだ」など、驚きの声が多く寄せられ、上映会はさまざまな社会課題を自分ごととして考える好機になっています。

『食の安全を守る人々』

「昨年秋には、弁護士で元農水大臣の山田正彦さんプロデュースによる『食の安全を守る人々』の上映会を3市民団体共催で行いました。映画の中では、子供のために国や企業と戦う女性、韓国の小学校で普及するオーガニック給食の現状なども取材された話題作で、上映会には山田さんも登壇してくださいました」

食の安全を守る人々

見どころ・あらすじ

日本の国内外で、農と食の持続可能な未来図を模索する人々を取材し、メディアが伝えない食の裏側に迫ったドキュメンタリー。長年農業をテーマに制作を続けてきた原村政樹監督の作品

 

製作:2021年

監督:原村政樹

配給:きろくびと

https://kiroku-bito.com/shoku-anzen/

『もったいないキッチン』

エシカ読者の中でも観た!という人が多いかもしれない『もったいないキッチン』も、一般公開後間もない2021年に上映会が開催されました。日本の「もったいない精神」に魅せられ、オーストラリアからやってきた映画監督のダーヴィド氏が、日本を旅しながらサスティナブルな未来のヒントを探る物語で、文科省の選定作品にも選ばれました。

もったいないキッチン

見どころ・あらすじ

「もったいない」は、もともと仏教思想に由来する言葉で、無駄をなくすことだけでなく、命あるものに対する畏敬の念が込められた日本特有の美しい言葉。しかし、実際に日本を訪ねたオーストラリア人のダーヴィド・グロス氏が見たものとは。コンビニや一般家庭に突撃し、捨てられてしまう食材を次々に救出。美味しい料理に変身させて、キッチンかー「もったいないキッチン」を日本各地でオープンさせるストーリー。

 

製作:2020年

監督:ダーヴィド・グロス

配給:ユナイテッドピープル

https://www.mottainai-kitchen.net

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

「2022年4月には『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』を上映しました。ダイナミック有機農法についてのドキュメンタリー映画で、自然を愛する夫婦がオーガニック農場をつくり上げるまでの8年間を追いかけた作品です。自然が教えてくれる本当の豊かさが力強く伝わってくる感動作で、とにかく映像が美しい。壮大なビジュアルが観る人の意識に訴えかける迫力に満ちた作品でした」(藤岡さん)

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

上映後にはfacebookの給食グループメンバーと地元の農家さんによるステージアピールが行われ、会場で同時開催したオーガニック・プチマルシェも大好評だったとか。オーガニックの野菜や米、調味料、コーヒーなども販売され、消費者と生産者とが直接コミュニケーション。今後も上映会+アルファの試みを展開していく予定というから楽しみ!

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

見どころ・あらすじ

殺処分寸前で保護した愛犬の鳴き声が原因で、大都会・ロサンゼルスのアパートを追い出されてしまったジョンとモリー・チェスター夫妻は、一念発起して郊外へ引っ越すことを決意。それは、料理家でもあるモリーが「本当に体に良い食べものを育てたい」という夢を叶えるための、理想の農場づくりへの第一歩でした。

 

製作:2018年

監督:ジョン・チェスター

配給:シンカ

https://synca.jp/biglittle/

身近な環境問題に目を向けた作品、化学物質過敏症と奇跡の林檎

「私が個人的にぜひ紹介したかったのが、世界で初めて化学物質過敏症を描いたドキュメンタリー『いのちの林檎』です。昨年末に上映会を行い、参加者は100人を超えました」

いのちの林檎

化学物質過敏症は、ほんの少しの物質にも過敏に反応するアレルギー疾患に似ていています。洗剤、柔軟剤、芳香剤など、日常生活で私たちが何気なく使用しているものに含まれる化学物質に接することで、頭痛や倦怠感、不眠などさまざまな不快症状が現れる疾患です。花粉症と同じで、一度発症すると、消臭スプレーや芳香剤などのかすかなニオイにも耐えられなくなり、呼吸困難などを引き起こすこともあるという恐ろしい病気。環境汚染が進む現代社会では、誰もがいつ発症しても不思議ではありません。各都道府県のホームページなどでも注意を呼びかけています。

「北杜市には8年前に『化学物質過敏症』の窓口が開設されました。地方自治体としては画期的なことです。上映後の意見交換では“こんなにひどい症状だとは思わなかった”、“電磁波、低周波まで反応するとは!”、“自分の衣服の香りにも気をつけようと思う”、といった感想が飛び交い、決して他人事ではないという現実を知る機会となりました」

身近な環境が、実は「化学物質の海」であることを知って、今から少しずつでも脱石油、脱化学合成物質の生活を始めてほしいと願う藤岡さん。ヘアスプレー、除菌剤、柔軟剤などのにおい=「香害」と位置付け、自分にとって快適な「香り」が、もしかしたら誰かを傷つけているかもしれないという意識を持つ必要があると言います。知ることから実践へ、その環を広げていくことも急務なのです。消費者が知ることによりそう言った商品を買わないことで世の中は必ず良い方向へ変わっていきます。

『いのちの林檎』

いのちの林檎

見どころ・あらすじ

主人公早苗さんは、自宅の新築でシックハウスになった後、近所のゴルフ場の農薬散布で化学物質過敏症を発症。しかし病名がわかるまで6年かかり重症になってしまいました。そしてある日突然、お鍋から食器から食べ物から全てに拒絶反応が起こり、水が一滴も飲めなくなったのです。そんな早苗さんを救ったのが、いのちの林檎。弘前市の林檎農家、木村秋則さんが17年の歳月をかけ、無肥料・無農薬で実った林檎。奇跡の林檎と呼ばれています。

 

製作:2012年

監督:藤澤勇夫

配給:いのちの林檎製作委員会

https://www.inochinoringo.com

『夢見る小学校』

最後にもう一つ。藤岡さんが2023年春に自主上映を予定しているのが『夢見る小学校』。

「私立の学校法人『きのくに子どもの村学園』に密着したドキュメンタリー映画で、ここに出てくる小学校は、テストも成績表もないし、決まったカリキュラムもない。映画の中では、子供が自分たち自身で考え、行動することを大切に、一人ひとりの自己決定を尊重する “子供ファースト”な小学校が3校紹介され、山梨県南アルプス市にある『南アルプスこどもの村小学校』も出てきます。これからの学校教育に希望を見出せる作品です」

夢見る小学校

見どころ・あらすじ

宿題がない、テストがない、「先生」がいない。「きのくに子どもの村学園」の子供たちは、「プロジェクト」と呼ばれる体験学習の授業を通じて自分たちでプロジェクトを運営して、自らの頭で考えます。「楽しくなければ、学校じゃない」。学校って、本当はこんなにワクワクする場所だったんです。学校観が180°変わる衝撃の授業風景を楽しもう!

 

製作:2021年

監督:オオタヴィン

https://www.dreaming-school.com

この映画に出てくる子供の姿を見ると、「子供ってすごい!」「好きなことを自由にやらせて大丈夫なんだ」と“子供のもつものスゴい可能性”を発見し、頼もしく感じるはず。

 

夢見る小学校

「大人が教えるのではなく、実際の生活を通して得た知恵というのはとても豊かだなと思います。子供たちが身につけた“自分で考える力”は、将来、自己肯定感や困難に立ち向かう強い力を育ててくれるでしょう」

最近では、公立学校でも“子供ファースト”な体験型学習を取り入れる小学校が増えつつあるようなので、これからの日本の学校教育のあり方に大いに期待したいと藤岡さん。

上映会の最新情報 2023年2月19日(日)『君の根は。大地再生に挑む人々』

”劇場公開はせず、各地の自主上映運動によって広められている作品。「人々は長い間大地から収奪することばかりに夢中になってきた。干魃も飢饉もある意味人的災害だと思っている。月面のように荒れ果て高熱に喘ぐ「ガンベリ砂漠」に水が引かれ、初めてスイカを収穫した時「緑の偉大さは人の思いに勝る」とは、故中村哲医師の言葉だ。地球規模での異常気象も自然の環境にバランスを蘇らせることにより正常に戻すことができるかもしれない。少しでも希望があるなら後世の人々のために試してみる価値はあるのだろう。すべては私たちの足元に!” 主催者より

2023年2月19日には、『君の根は。大地再生に挑む人々』の上映会を予定。文化人類学者の辻信一氏も登壇予定。興味のあり方、お近くの方はぜひご参加ください!

見どころ

”「リジェネラティブ(大地再生)」という世界観と出会い、農業・漁業・牧畜を、そして生き方そのものを転換した人びとに迫るドキュメンタリー映画、『君の根は。大地再生にいどむ人びと』の日本語版が2022年秋に完成、 各地での上映会が始まりました。

誰でも自主上映会を企画して、この希望のメッセージを広めることができます。ぜひこの映画をきっかけに大地再生ムーブメントにご参加ください。”

日本語版制作上映チーム

レイモンド・エップ、荒谷明子、辻信一

https://www.yukkurido.com/towhichwebelong

八ヶ岳の未来が明るく豊かであるために、私たちができること

日本を代表する百名山に囲まれ、豊かな水源に恵まれ、日照時間も長さにおいても日本トップクラスの北杜市。化学肥料や農薬、遺伝子組み換え技術を利用しない『有機農業』の取り組み面積は年々拡大。北杜市の農政課でも熱心な取り組みが始まっているようです。

「給食に有機農法で作られたお米を取り入れようと、2023年1月から月2回、有機農法によるお米が使用されるようになりました。同じく週3回提供の特別栽培米もネオニコチノイドを使わないお米が給食に使われることも決まり、子供の食の安全に対する取り組みも着実に進んでいます。一足飛びには行きませんが、有機農法が増え、やがて農薬や肥料を使わない自然農法による農作物が徐々に増えていくことを期待しています。それには、私たち消費者が、安心・安全な作物をつくろうと努力している生産者さんを応援していく気持ちが大切です」

藤岡さんが選ぶお米は、無農薬・無化学肥料による自然栽培米。手間がかかる分、価格は高いけれど、「ファンになって、頑張る農家さんを支えていきたい」と考え、定期的に購入しています。

ひまわり市場さんにも無農薬米やオーガニック野菜が売ってるから、じゃあ買ってみようかなって。そんなふうに地域の方々の意識が少しずつでも変わっていけたらいいのかなと思うんですね」

小さな活動の積み重ねが、やがて大きな力となって安心・安全な社会をつくっていく。

だから、ひとりでやっても意味があるの?という考えは捨てましょう。日本の未来のために私たちができること、まだまだたくさんありそうですよ。

【あわせて読みたい】ethicaバックナンバー

(第18話)「わざわざ行きたい!」美味しい感動を届けるスーパーマーケット

藤岡さんにとって「私によくて、世界にイイ。」こととは?

「正しい素性のものを選んでいくということじゃないかな。どういう状態で作られたものなのかをきちんと知って、自分が納得できるものを選んでいくこと。そして、本物をセレクトする目を育てることだと思うんです。誰がどんな風なこだわりをもって作ったかを知ると、「応援したい」「支えたい」という気持ちが自然に生まれます。そして、生産者を知って、実際にどうやってつくっているかを知れば、安心して買い物ができますよね。突きつめていくと、やはり人と人のコミュニケーションから生まれるもの。つくり手と買い手の間に信頼関係があって、その距離が縮まれば消費行動そのものが変わってくるはずです。それは、ゆくゆくは自分に返ってくるんですよね。食べものが人をつくるんです」(藤岡さん)

インタビューを終えて

あえて一歩踏み込んで「メディアが発信していない真実を伝えたい」と語る藤岡さんの力強い言葉に、今回もまた勇気をもらいました。藤岡さんが自主上映されてきた数々のドキュメンタリー作品の中にも、ハッとするような驚きや発見がいっぱい。そして、日々、何気なく食べているものについて、改めて考える機会をいただきました。

まず知ることから始めよう!

いくつになっても人間、学習する気持ちが大切です。大人も学び直しの時代ですね。

 

さて次回は、八ヶ岳の大自然の中で、人・風景・建築などを撮り続ける写真家の創作活動をご紹介します。お楽しみに!

バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」を読む>>>

藤岡 久美子(ふじおか くみこ)

埼玉の高校教員(音楽教師)を早期退職し、八ヶ岳に移住。障害をもつ保護犬の里親として生活。3年ほど前から地域活動をスタート。「未来を生きる子供たちに、安心安全な給食を」「今を生きる私たちが食べているものを知ろう」など、食と農の安全や環境・人権問題などをテーマに、自主上映会やイベントを主催。

記者:山田ふみ

多摩美術大学デザイン科卒。ファッションメーカーBIGIグループのプレス、マガジンハウスanan編集部記者を経て独立。ELLE JAPON、マダムフィガロの創刊に携わり、リクルート通販事業部にて新創刊女性誌の副編集長を務める。美容、インテリア、食を中心に女性のライフスタイルの動向を雑誌・新聞、WEBなどで発信。2012年より7年間タイ、シンガポールにて現地情報誌の編集に関わる。2019年帰国後、東京・八ヶ岳を拠点に執筆活動を行う。アート、教育、美容、食と農に関心を持ち、ethica(エシカ)編集部に参加「私によくて、世界にイイ。」情報の編集及びライティングを担当。著書に「ワサナのタイ料理」(文化出版局・共著)あり。趣味は世界のファーマーズマーケットめぐり。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

山田ふみ

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[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

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生地の切れ端を使用したブランド「UpcycleLino(アップサイクルリノ)」から、エシカルなデニムジャケットがリリース
「ベアミネラル」から、肌にも地球にも優しい、うるおい&ハリを実現するスリーピングマスクとクリームが発売!

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