生駒: 藤本さんがデザインしたのは、ひとことで言えば「時を忘れる時計」。ガラス面は薄曇りだし、時計なのに何ではっきり見えないの? (笑)って、普通はそういう疑問を持ったりしますよね。でも、完成した「CITIZEN L Ambiluna」を見た方はみんなとても感動する。だって、かつてない時計だし、何より私もそうなんですが、着けると心がふわっと解き放たれたような気持ちになるんです。今って時間に追い詰められ、切り刻むような時間の枠組みの中で生きているところがある。そんなときに、一瞬時間を忘れて「焦っちゃいけないな」「ちょっと心を落ち着けよう」と思わせてくれる。腕時計でリゾートする、みたいにね(笑)。藤本さんの中にある科学者の部分と哲学者の部分がシンクロしているように感じられます。
生駒: まず自分が喜ぶことってすごく重要。伝統工芸とファッションをつなぐという私のライフワークも、職人さんも楽しんで、私もエキサイトして、そうすれば喜びは必ず人に伝わると信じています。そして、その一つの形を「CITIZEN L Ambiluna」で実現し、日本の美しいものづくりがもっともっと先に行けるという予感を感じることができました。この種をさらに芽吹かせ、大きく育てていきたいですね。
「本当の美しさ」に向き合い、時計というプロダクトとして表現するという難題に挑戦したいと考えたシチズンのプロジェクトチームの皆さん。そして、時計のプロデュースは初体験だった生駒さん。お互い手探りながらも、この「縁」が次々と新しいアイデアを生み、「CITIZEN L Ambiluna」が生まれました。上品でエレガンスな輝きを放つ時計は、その美しさだけで多くの人の心をつかむことは間違いありません。しかし、育んだ多くの人たちのひたむきな思い、紡いできたストーリーとともに、世界中の女性たちに届けてほしい−−。お二人のお話を聞き、そう思わずにはいられません。