(第32話)いつもの道を歩いてみたら【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第32話)いつもの道を歩いてみたら【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

一日の中で大切にしている「散歩」の時間

最近私が密かに楽しみにしている時間があります。

それは、娘と保育園までの道のりを歩くこと。

 

いつもは大急ぎで家を出て自転車でびゅーんと駆け抜けていくその道を、少し余裕のある朝や雨の日は歩いて保育園へ向かいます。

 

歩き出した途端何かを見つけてしゃがみこんだり、と思ったら突然走り出したり、石垣の上に登ってバランスを取りながら歩いたり。

大人の足なら5分とかからないところを、娘のペースに合わせて30分くらいかけて歩いていく。ただそれだけなのですが、思いのほか娘にとっても私にとっても大切な時間になっているなぁと思うこの頃です。

キーンと冷え込む日が続くなか、この日は風もなくポカポカ温かい陽射しを感じる良い天気で、思わず「今日は保育園歩いていこっか!」と娘と大急ぎで準備して早めに家を出ました。

 

階段を降りたところにある立派なイチョウの木。風が吹くたびに黄金色の葉が舞い散り地面を金色に彩っています。

娘はイチョウの葉を「せんせいにみせるねん!」と何枚も拾って花束のように重ね、一通り集めて満足すると片手にギュッと握りしめ走り出します。

 

ぴたりと足を止める先を見ると、木の根元で日向ぼっこする白い野良猫が一匹。

「ねてるんかなぁ。はっぱたべるかな?」。そのへんの雑草をちぎってきて猫の前にそっと差し出す娘。いつも誰かから餌をもらって人馴れしているその猫は、片目を開けてちらりと草を見るとスッと顔をそむけます。

 

ちょっぴり残念そうな様子を見せつつも、「もうだれかがごはんあげたんちゃう?」と開き直ってまた娘の興味は次に向かいます。

いつも通る道だからこそ、小さな自然の変化に気づくことがたくさんあって、そんな自然の姿を娘を通して見るのが面白くて。

つい「はやくはやく」と急かしてしまいがちな朝のバタバタ時間のなかで、ほんの少し時間と気持ちの余裕があるだけで、見える世界も娘と過ごす時間の質も大きく変わることを感じます。

 

じゃあ毎日早起きして歩いて行けばいいのに、とも言えるのですが……。

「こうしなきゃ」と決めてしまうとそれはそれでしんどくなるで、その日の気分だったりお天気で「よし行こう!」と思える時に歩いていく、というのが今の自分にとってはちょうどいいな、なんて思ったりしています。

 

時計の時間でなくその場に流れる時間をじんわり味わう。

そんなひとときをほんの少しでも一日の中で大切にすることが、子どもとの暮らしや心を豊かにしてくれることに、あらためて気づかせてくれた朝のお散歩時間なのでした。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

【連載】かぞくの栞(しおり)

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】  静岡県 袋井市の旅 おいしいもの発見!
独自記事 【 2025/3/20 】 Work & Study
日本列島のほぼ真ん中で、駿河湾を囲むように位置する静岡県。その中でも、太平洋に面する西の沿岸部に近いところに袋井(ふくろい)市があります。東西の交流地点として、古くから人や物や情報の往来を支えてきた袋井市は、高級メロンやリゾート、由緒正しき寺院など、未知の魅力がたくさんあるユニークな場所です。今回は、そんな袋井市の中で...
冨永愛 ジョイセフと歩むアフリカ支援 〜ethica Woman Project〜
独自記事 【 2024/6/12 】 Love&Human
ethicaでは女性のエンパワーメントを目的とした「ethica Woman Project」を発足。 いまや「ラストフロンティア」と呼ばれ、世界中から熱い眼差しが向けられると共に経済成長を続けている「アフリカ」を第1期のテーマにおき、読者にアフリカの理解を深めると同時に、力強く生きるアフリカの女性から気づきや力を得る...
持続可能なチョコレートの実現を支える「メイジ・カカオ・サポート」の歴史
sponsored 【 2025/3/19 】 Food
私たちの生活にも身近で愛好家もたくさんいる甘くて美味しいチョコレート。バレンタインシーズンには何万円も注ぎ込んで自分のためのご褒美チョコを大人買いする、なんてこともここ数年では珍しくない話です。しかし、私たちが日々享受しているそんな甘いチョコレートの裏では、その原材料となるカカオの生産地で今なお、貧困、児童労働、森林伐...

次の記事

読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第5章:フリータイムの哲学編(第5節)
表参道ヒルズで、おいしくゴージャスな“サステナブル”クリスマスを!

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます