(第2話)「思い出はいつも香りとともに」 【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第2話)「思い出はいつも香りとともに」 【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

空が白みはじめるのが随分と早くなったこのごろ。

朝日が差し込む東側のベランダに出ると、まだ少しツンと肌寒い空気と初夏の日差し、そして青々とした新緑の香りに包まれます。

 

その香りを思い切り吸い込んだ瞬間、フワッと蘇ってくるのは、学生のころ沖縄の西表島で過ごした日々のこと。

南十字星を見てみたいと、日本最南端の波照間島に一人旅に出たのをきっかけに沖縄の魅力にとりつかれ、長期の休みのたびに島巡りをしていました。

するとひょんなご縁で、数ヶ月間、西表島の民宿で働かせてもらうことに。

 

民宿から一歩出るとその先には、常緑樹の青々とした森、真っ青に透き通る海。そして、どこまでも白い砂浜。

そこは、大自然の強い生命力が生み出すエネルギーに満ちあふれていて、ただいるだけで、なんだか心の底から元気になるような気がしたものです。

 

ぼんやりとそのころのことを思い出しながら、ふと我にかえると、そこはわが家のベランダ。

 

香りというのは不思議なもの。香りと記憶が結びついた瞬間、そしてそのときの気持ちを、鮮明に蘇らせてくれます(この感覚は自分だけの特別なもの……と思っていたら、つい最近、これは「プルースト現象」というものだと知りました。ちょっぴり残念)。

 

旅行はおろか、外出すらしづらい日々ですが、香りは時間も空間もあっさり超えるんだなぁと、ふとした香りの思い出に癒されるこのごろです。

そして、この季節になると心がじんわりとあたたかくなる香りがもうひとつ。

いちごの香りです。

 

娘が生まれた3年前。

産後初めて迎えた朝、まどろむ娘をそっと抱き上げると、ふんわりといちごのような甘酸っぱい匂いが鼻をくすぐりました。

 

出産前によくいちごを食べていたからかな? と思いきや、その日以降も、娘は時々その香りをまとっていたのです。

抱っこするたびに、ミルクの乳くさい匂いといちごの甘酸っぱい香りを胸いっぱいに吸い込むのが、慌ただしい毎日のなかでの、ささやかな楽しみでした。

 

そんな娘は、離乳食が始まって間もないころから、当然のようにいちご好き。

 

顔も服も赤く染めながらいちごを口いっぱいに頬張り、眉間にしわを寄せた真剣な表情でもぐもぐもぐ。

そのあとに広がる笑顔は、見ているだけで、幸せだなぁと感じます。

 

大きくなるにつれ、いつのまにか消えていた娘の甘酸っぱい香りですが、いちごを食べた日は赤ちゃんだったころの懐かしい記憶を思い出させてくれます。

 

つい嬉しくて顔をうずめるようにふがふがしていると、最近では「もう、ママやめて〜」と笑いながら逃げられますが。

 

そんな娘も外遊びをたくさんするようになったこのごろは、いつも砂っぽい日向の匂い。

保育園帰りの足からは、たまにツンと鼻につく臭いが漂ってくる日も……。

 

でもいつか、この香りも大切な思い出になるのでしょうか。

 

いま、この瞬間の気持ちをとっておきたくて、今日も胸いっぱい香りを吸い込むのです。

【連載】キコの「かぞくの栞」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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