ガーデニングを文化とするイギリスで学ぶ、ガーデンデザイナーの佐藤麻貴子さん テーマは「エシカル、持ちかえる」 「エシカルファッションカレッジ」開催(後編)
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
6,328 view
ガーデニングを文化とするイギリスで学ぶ、ガーデンデザイナーの佐藤麻貴子さん

ガーデンデザイナーの佐藤麻貴子さんによるエシカル ガーデニング実習の様子

5月9日(世界フェアトレード・デー)、10日(コットンの日)、2日間だけのイベント「エシカルファッションカレッジ」が世田谷区のIID世田谷ものづくり学校(旧池尻中学校跡地)で開催されました。

昨年に引き続き今回で2回目となる同カレッジは、デニムブランド「Lee」を手がけるリー・ジャパンと世界の子どもたちを児童労働から守る国際協力NGO、特定非営利活動法人ACEを中心とする実行委員会が「エシカル、持ちかえる」をテーマに、講義や講演、実習(ワークショップ)、ファッションショー、映画などのさまざまな授業を通じて、作る人も着る人も、みんながハッピーになるサステナブルなファッションを考えようというものです。

今回、エシカルな視点からガーデニングを考えようと行われたのが「エシカル ガーデニング」です。参加者はバジル、オレガノ、パセリの3種類のハーブの寄せ植え体験をしました。講師を務めたのはガーデンデザイナーの佐藤麻貴子さんでした。

ガーデンデザイナーの佐藤麻貴子

ガーデンデザイナーを目指して渡英

子どもの頃から自然の中で育った佐藤さんは、もともとガーデニングに興味を持っていました。しかし、就職活動の際、ガーデニングが仕事になるとは思わず、都内にある老舗ホテルに就職しました。

「入社10年目くらいでしたか、シーズンだけ営業しているホテルに、本社より半年間派遣されたのです、そこは国立公園で、大自然の中にありました。そこで生活をしているうちに緑を使った仕事をしたいなと思うようになったのです」(佐藤さん)

2003年、ホテルを辞めた佐藤さんは渡英、現地の大学の園芸学部に入って1から園芸の勉強を始めました。

イギリスでは、子どもたちに土に触れる機会を積極的に与える

「イギリスはガーデニングを自分たちの文化として大切に考えている国です。やるからにはそういう国で学びたいと思いました。イギリスでは、子どもたちに小さい頃から土に触れる機会を積極的に与えようとします。でも、日本にはそういう考え方はありません。そこは大きな違いかもしませんね」(佐藤さん)

イギリスではチェルシーやハンプトンコートなど各地で大きなフラワーショーが開かれます。佐藤さんはそうしたショーの手伝いをしながら7年間勉強を続け、2010年の夏に日本に戻ってきました。

ガーデニングはエシカルと通ずる

佐藤さんは、ガーデニングはエシカルという言葉を使っていませんが、もともと、その考え方自体、エシカルなものだといいます。

「ガーデニングという言葉にはingがついているでしょう? 緑の中に入っていって動作をすること、やることの全てがガーデニングであり、それ自体がとても楽しいんです。それともう一つ、私は自分で作ったものを自分で食べること、それがとても大事だと思っています。例えば、パセリを植えるとすると、育ったらどうやって食べようかなと考える。マヨネーズをつけたらいいのかとか、ドレッシングをつけたらどうかしらとか、そう考えると、ガーデニングがさらに楽しくなってきます。それって、エシカルと通じるものがあると私は思っています」

さらに佐藤さんは、オーバーオールやエプロンなど作業をする時のファッションや使う道具にもこだわりがあります。ガーデニングは重労働なので、せめてオシャレぐらいしましょうよというのが佐藤さんの考え方。そして、道具も例えば、いつかは土に返る、もみ殻で作られた鉢を使うなど環境にも配慮しているそうです。

そんな佐藤さんは現在、ガーデンデザイナーとして個人宅や公共施設の植栽デザインを中心に仕事をしています。

「日本、特に大都市圏にはお庭のある家が少ないので、個人のお宅の庭を作る機会がほとんどないのが残念ですね。将来は皆さんに発信できるお庭を作って、緑の楽しさを伝えていきたいと思っています」(佐藤さん)

ガーデンデザイナーの佐藤麻貴子さん、LEEでトータルコーディネート

ファッションはライフスタイルそのもの

最後に、今回の「エシカルファッションカレッジ」の学長を務めたリー・ジャパンの細川秀和さんにお話をお聞きしました。

ちなみに、リーは1889年にアメリカで創設された、高品質と普遍的なデザインが人気ジーンズメーカーです。日本では1987年にリー・ジャパンとしてライセンスを取得しました。環境と人にやさしい技術の開発・活動を積極的に行っている会社としてもよく知られています。

エシカルファッションカレッジ細川秀和学長(リー・ジャパン取締役)

「初日は朝方に天気が悪かったせいか、お客さんの出足が今一つで心配しました。でも、終わってみたら昨年以上の大盛況でホッとしましたね」と細川さん。

今年は会期を2日間にし、去年は扱わなかった食やエネルギーなどの分野を広げたことについては、

「ファッションは何も着るものだけではなく、ライフスタイルそのものがファッションだと思うんです。だから正直なところ、エシカルがどうしたとか、そんな難しいことはどうでもよくて、今回のイベントをきっかけにして軽い気持ちで入ってきてくれればそれでいいんです」

細川さんのその願いは来場者にも通じ、誰もが何かを「持ちかえる」ことのできた2日間になったのではないでしょうか?

「エシカルファッションカレッジ」Photo Gallery

絞り染め体験実習の様子

LeeのTシャツを好みの色で絞り染めに挑戦

インドを感じる糸紡ぎ実習、畑で収穫されたオーガニックコットン

コミュニティー・フェアトレード メイクアップ講座の様子

ーーBackstage from “ethica”ーー

イギリスでガーデニングを学んだ佐藤麻貴子さんは、2012年に”日本の復興”と題し、ハンプトンコートパレスフラワーショーにて初の出展。’シルバーギルド受賞’されました。詳しくはこちらから→http://gardencharityuk.jimdo.com/

記者 清水 一利(しみずかずとし)
1955年千葉県市川市生まれ。明治大学文学部(史学地理学科日本史専攻)を卒業後、1979年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通パブリックリレーションズ)に入社。クライアント各社のパブリシティ業務、PRイベントの企画・運営などに携わる。1986年、同社退社後、1987年、編集プロダクション・フリークスを主宰。新聞、雑誌(週刊誌・月刊誌)およびPR誌・一般書籍の企画・取材・執筆活動に従事。2012年「フラガール3.11~つながる絆」(講談社)、2013年「SOS!500人を救え~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)を刊行。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

 

清水 一利

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
[エシカ編集部 体験企画]環境や人権に配慮したエシカル素材で心地の良いナチュラルな香りと時間を実感「Care me(ケアミー)」のインバスグッズ
sponsored 【 2024/3/29 】 Health & Beauty
一日の終わりのバスタイムは、その日の自分をとびきり労って心とからだを回復させてあげたい愛おしい時間。そんなセルフケアの習慣にほんの少し、地球環境や自分以外の人にもちょっと良いアクションが取れたら、自分のことがもっと好きになれる気がしませんか? 今回ご紹介するのはエシカ編集部が前々から注目していた、エシカルな素材を使って...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.6 宇賀なつみ (第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ
独自記事 【 2024/3/27 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
そろそろ知っておかなくちゃ! 水素のこと。森中絵美(川崎重工)×中村知弘(UCC)
sponsored 【 2024/3/26 】 Work & Study
2023年の記録的な猛暑に、地球温暖化を肌で感じた人も多いだろう。こうした気候変動を食い止めるために、今、社会は脱炭素への取り組みを強化している。その中で次世代エネルギーとして世界から注目を集めているのが「水素」だ。とはいえまだ「水素ってどんなもの?」という問いを持っている人も多い。2024年2月に開催された「サステナ...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
独自記事 【 2024/2/28 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【ethica Traveler】連載企画Vol.3 宇賀なつみ (第2章)W サンフランシスコ ホテル
独自記事 【 2024/2/14 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.2 宇賀なつみ (第1章)サンフランシスコ国際空港
独自記事 【 2024/1/31 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

身長192㎝の大型新人、国内最大級のシンガーソングライター『浜端ヨウヘイ』が6月10日いよいよ待望のファースト アルバムをリリース 〜山崎まさよし、BLACK BOTTOM BRASS BAND、金原千恵子といった豪華ゲスト陣の演奏も収録〜
着実に広がりつつあるエシカル消費、渋谷ヒカリエShinQsが展開するエシカルとは? 8つのカテゴリーで「エシカル」をより身近にわかりやすく。

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます