(前編)「ジェネレーションZと次世代の経済」 NPO法人「UMINARI」代表理事 伊達敬信さん
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(前編)「ジェネレーションZと次世代の経済」 NPO法人「UMINARI」代表理事 伊達敬信さん

2月19日・20日、パシフィコ横浜で開催された「サスティナブル・ブランド国際会議2020横浜」(SB 2020 YOKOHAMA)のオープニングを飾るプログラムとして19日9時50分から「PLANARIES(本会議)」が行われました。そして、その冒頭「ジェネレーションZと次世代の経済」と題し、Z世代を代表として海洋プラスチック問題を中心に環境問題に取り組んでいるNPO法人「UMINARI」代表理事・伊達敬信さんと、現在、世界中を飛び回り映像作家・ジャーナリストとして各地のさまざまな社会問題を取材している慶應義塾大学2年生の小西遊馬さんが登壇しました。次世代を担う若いお2人の貴重な提言をご紹介しましょう。

NPO法人「UMINARI」代表理事・伊達敬信さん

20歳の夏、僕は朝から晩まで、海岸から海岸へ海のごみを拾って回っていました。今のままでいけば2050年までに海のごみが魚の量を超えると聞いた時、夢が覚めたように、それまで気にかけてきたキャリアビジョンのことが頭からスーッと離れ、まったく新しい自分自身が生まれた感覚を今でもよく覚えています。

その時はこれといったアイデアがあったわけではありませんが、自分の手で何ができることはないか、そういう思いでした。それから2年半、気がつけばその手がどんどんと増え、Z世代を中心とする次世代型のNPOが誕生し、さまざまなアイデアが生まれて、これまでにはなかった広く皆さんを巻き込む価値創造のムーブメントが湧き上がってきました。それは自分を含めた若い世代、社会を牽引してきた上の世代の人たち、企業、消費者、政府の人々など、それぞれの間に対立構造を生み出すのではなく、あらゆる垣根を越えて全体としての価値創造を引き出す姿勢を大切にして、これまで活動を貫いてきました。

Z世代といえば、生産性を欠く感情論や過激なアクションでしばしば敬遠されることもあります。

しかし、今日はともに持続可能な経済を推進する、よきパートナーとしてのZ世代の可能性と、その必要性について説明させていただきたいと思っています。そして、その先に真のサステナビリティを追求する幅広い共創と、より強く、しかも正しい経済を構築しましょう。

次世代の経済はZ世代の動きがカギになります。1995年~2000年生まれを目安にしたこの世代は、60年代~70年代のX世代、80年代~94年生まれのY世代とはまったく異なる習性と消費特性を持っています。Z世代の特性の中でもっとも強調されるのは、デジタルネイティブということです。この特性がオンラインとオフラインを自由に行き来し、情報や人にアクセスするZ世代の動きに繋がっています。

これに加えて、Z世代は2つの重要な特性を持っています。1つは真実を追求する姿勢である、もう1つは真実の追求から生まれた倫理的思考です。

加速するグローバル化や極端な貧富の差、遠い国の児童労働が生み出す先進国の豊かな経済、複雑化する社会そのものや、そこに浮かび上がる社会問題の深刻化がZ世代にこのような特性をもたらしました。

倫理的な消費者が大きな力を持っていく

消費特性としても反映されるこれらの特性は「X世代の消費特性=生活の獲得」や「Y世代の消費特性=エクステリエンスの重視」とは全く異なる特性です。デジタルネイティブも含めたこの3つの特性への深い理解とその活用は、次世代の経済をリードする上で欠かせない要素になっています。

これまでの経済は、生産者から消費者への商品やサービスの提供という流れが軸になっていました。

しかし今日、生産システムの複雑化によって、自分が普段使う商品やサービスさえ、それがどうやって作られ、どのように提供されているのかが見えにくい状況が生まれてきています。

さらに、その目に見えないところで失われている価値や豊かさがあります。この状況に対してZ世代は新たな動きを見せています。見えにくい部分や複雑性、失われている価値に意識を傾けている消費者、コンシャスコンシューマーが日に日にその数を増やしています。目の前の商品やサービスではなく、全体としての価値に対価を支払う倫理的な消費者がマーケットにおいていよいよ大きな力を持っていきます。

Z世代による真実の探求、価値の探求は消費者としての役割だけにとどまりません。消費者としての役割を越え、その足を動かし、その目で真実を追求し、その手で失われた価値を取り返そうとするZ世代が出現しているのです。僕もその1人です。

プラスチックの大量生産によって便利さ、豊かさが生み出されました。しかし、その一方で海洋ごみの問題が起こってきました。初めて足を運んだ千葉・幕張の海で僕が目にした光景は失われた価値を取り返し、新たな価値を作り上げるアドベンチャー「UMINARI」を生み出しました。

これまで多くのZ世代の仲間に出会いました。12歳で活動を始め6年間の努力の末、バリ島のビニール袋廃止の立役者になったメラティもその1人です。彼女は今、ダボス会議をはじめとする世界の主要な国際会議においてZ世代への支援を訴求し、世界経済の再構築に貢献しています。

デジタルエイジのZ世代は、これらの価値や価値観をオンライン・オフラインの垣根を越え、圧倒的な速度とリーチで拡散し共有し始めています。デジタルプラットフォームのタスクによって、今は1人1人がその力を持ち、24時間365日、国境をも超えてダイナミックな共有が行われているのです。

ちょうど2か月前、この価値の探求と発信に命をかけている日本人のZ世代に出会いました。コニーこと小西遊馬君です。慶應義塾大学の現役2年生として学生生活を送りながらジャーナリストとしての活動を行っている彼は、協賛企業から資金を得て、世界中を飛び回りながらドキュメンタリーを制作、これまでロヒンギャ難民や香港デモ、フィリピンの売春問題を取材して国内外で多くの賞を得ています。そして、SNSを中心とした発信や講演などを通じで傍観からアクションへの意識改革を促しています。それではコニーをご紹介します。

(後編に続く)

続きを読む(後編)>>>

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【ethica Traveler】 連載企画Vol.7 宇賀なつみ (終章)『Returning to TOKYO~サステナブルなフライト〜』
独自記事 【 2024/4/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
[エシカ編集部 体験企画]環境や人権に配慮したエシカル素材で心地の良いナチュラルな香りと時間を実感「Care me(ケアミー)」のインバスグッズ
sponsored 【 2024/3/29 】 Health & Beauty
一日の終わりのバスタイムは、その日の自分をとびきり労って心とからだを回復させてあげたい愛おしい時間。そんなセルフケアの習慣にほんの少し、地球環境や自分以外の人にもちょっと良いアクションが取れたら、自分のことがもっと好きになれる気がしませんか? 今回ご紹介するのはエシカ編集部が前々から注目していた、エシカルな素材を使って...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.6 宇賀なつみ (第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ
独自記事 【 2024/3/27 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
そろそろ知っておかなくちゃ! 水素のこと。森中絵美(川崎重工)×中村知弘(UCC)
sponsored 【 2024/3/26 】 Work & Study
2023年の記録的な猛暑に、地球温暖化を肌で感じた人も多いだろう。こうした気候変動を食い止めるために、今、社会は脱炭素への取り組みを強化している。その中で次世代エネルギーとして世界から注目を集めているのが「水素」だ。とはいえまだ「水素ってどんなもの?」という問いを持っている人も多い。2024年2月に開催された「サステナ...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
独自記事 【 2024/2/28 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【ethica Traveler】連載企画Vol.3 宇賀なつみ (第2章)W サンフランシスコ ホテル
独自記事 【 2024/2/14 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.2 宇賀なつみ (第1章)サンフランシスコ国際空港
独自記事 【 2024/1/31 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

一期一会
(後編)「ジェネレーションZと次世代の経済」 映像作家・ジャーナリスト 小西遊馬さん(慶應義塾大学2年生)

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます