読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第4節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第4節)

ホーチミン市の様子

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第二章は「ベトナムと日常への気づき」と題して、全四節にわたりお送りします。ベトナムでの日常生活をヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第2章 ベトナムと日常への気づき

第4節 屋台の何がすごいか

最近は旅行に行けない代わりに、動画サイトで自分の暮らす街を紹介する動画が流行っています。その中でも特に私のお気に入りは、現地の屋台飯を紹介する動画。色んな国の見たこともない料理が目の前で出来上がっていく様を見ていて、世の中にはまだまだ知らないことが沢山あるなあと思ってしまいます。

日本では屋台はお祭りの時くらいしか見かけませんが、ベトナムをはじめとした東南アジアでは日常的に屋台飯が楽しめます。現地の人も普通に利用しますから、観光客向けではなく極めて日常的なものとして屋台が生活の中に位置付いているわけですが、ふとこの「屋台」というものに思慮を巡らしてみるとウェルビーイングの小さな芽が見えてきます。

不思議なドリンクの具材たち

ベトナム、ホーチミン市を歩いていると至る所で屋台に出会います。フォーを始めとした麺類の屋台だったり、バインミーというサンドイッチの屋台だったり、あるいは手軽なスナックやアイスの屋台もあります。

私はホーチミン市に滞在しているときは何度も利用しました。特に屋台のフォーの味は忘れられません。色々なレストランに行ってフォーを食べましたが、あの小さなキッチンの上で作られるフォーはそのどれもを超える美味しさでした。

屋台特有の美味しさや手軽さはもちろんなのですが、私には屋台に行くもう一つの理由がありました。屋台のパフォーマンス性です。

と言うのも、屋台をひく人は一日に何百食と作ります。その絶え間ない動作の中で、料理の動きはどんどんと洗練され、無駄のないものになっていきます。ノールックで調味料を手に取り、量りが無くとも同じ量の材料を掴むことが出来る。その所作はあまりに美しく、私は注文するたび、
目の前に張り付いてそれを観察していたほどです。

ベトナムのフルーツスタンド

私は特段、料理が好きというわけではないのですが、目の前でモノが組みあがっていく様は見ていてとても面白いものです。何が、どういう順番で、どれだけの量加えられることで、この味を生み出している。この一貫した流れを経験して初めて、私はその料理を「知った」と思えます。そして、その経験があることによって、私は容易に味の奥深さを想像出来ます。食事体験がよりリッチなものになるのです。

これは合唱祭に似ています。先生方が、親御さんたちを差し置いて、ワンワンと泣いてしまうということが、私の学校ではよくありました。数か月かけて準備をし、放課後にも残って懸命に練習していた子供たちを目の前で見ていたのだから当然です。過程を知っていれば、必然的に強い感情を抱いてしまいますから。

ライスペーパーのスナック

日本では、プロが料理を作っていく様子を目の前で観察することはなかなかありません。レストランでは、注文をして待っていれば勝手に完成した料理が運ばれてくる。素材が元々どんな形をしていたのか、どうやって味付けされ、どうやってお皿に盛られたのか、私たちには知る由もありません。

もちろんそれで良いという人もいるでしょう。ところが私には、これがある種、産業化の病であるような気がしています。つまり料理だけはなく、私たちは、生活の中で物事がどのように変化し、今の形になるのかを見えないでいるのです。過程を省き、結果だけを得ることに私たちはあまりに慣れてしまっていますが、私たちの人生は決して過程をすっ飛ばすことは出来ません。さまざまな現象を知覚し、感情を抱くことで、私たちは今この場所まで生きてきたはずです。

物事の過程を見るということは、結果に対して適切な評価を下せることです。今この場所から今の自分を見ることは出来ません。常に、過去の自分から今の自分を眺めることが、自分というものを正しく捉える方法だと私は思います。

今の自分にとってウェルビーイングとは何か。何に幸せを感じるのかは、自分が何に幸せを感じてきたのかを見つめ直すところから始まります。あなたはこれまでどのように生きてきて、そして今どのように生きたいと思っていますか?過程をひとつひとつ拾い上げて観察することで、何か見えてくるものがあるかもしれません。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話

題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

 

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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