<ethica編集長対談> 書籍「UMAMI: The Fifth Taste」プロデューサー 内山雅之さん OnJapan Caféを拠点として海外に向けて日本のいいものを発信していきたいですね。
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
<ethica編集長対談> 書籍「UMAMI: The Fifth Taste」プロデューサー 内山雅之さん

書籍「UMAMI: The Fifth Taste」プロデューサーの内山雅之さんは、これまでもKAISEKI(菊乃井:村田吉弘 著)、Nobu’s Vegetarian Cookbook(nobu:松久信幸 著)、WAKIYA(Wakiya:脇屋友詞 著)など多数のシェフによる英文書に携わってきました。現在は、第一通信社に企画編集事業部長として勤務するとともに、OnJapanプロジェクト立ち上げメンバーとして、日本の魅力を発信しています。

 

大谷一昨年は、ethicaグランドオープンプレスレセプションにご出席を頂きましてありがとうございました。

ethicaでは、読者への5つのメッセージを掲げております。今回は「先人の知恵や無形資産にも目を向けよう。」という切り口で、日本の魅力を発信してこられている内山さんに、書籍「UMAMI: The Fifth Taste」や日本文化の発信拠点である「OnJapan Café」についてお伺いさせて頂ければと考えております。

大谷:今回プロデュースをした「UMAMI: The Fifth Taste」についてまずお聞かせいただけますか。

内山さん:今、世界中のトップシェフたちが注目している「UMAMI」。料理の世界では、UMAMIは既に、世界共通語になっていますが、理解した上で実践している方は、まだ多くはありません。その啓蒙のために、既に実践しているシェフ達のレシピを紹介し、あわせて「うま味」を科学的データも含めて説明しました。世界中の多くの方々に「UMAMIを活用してみよう」と思っていただくための英文書です。菊乃井の村田吉弘氏に声掛けをお願いし、世界の著名なシェフに参画していただきました。

「和食」は、世界遺産に認定されましたが、その特徴は、「自然、季節を尊ぶ=素材の持ち味を活かす」と「栄養バランスに優れて健康的」である点であると思います。それを実現させたのは、うま味の活用、具体的には出汁の活用だと思います。出汁により素材の持ち味を活かして、塩分や動物性脂肪分を減らすことが実現できた訳です。その原点であり、甘味、塩味、酸味、苦味と同様に「基本5味」である「うま味」を世界の方々に知っていただくことが出版の目標でした。

和食、日本料理に関係する英文書を編集出版する際には、日本人だからこそできる発信を心がけています。「季節を食べる」という日本人の食生活、出汁や片刃包丁も日常に溶け込んでいる日本人だからこそ、本物の日本文化、日本料理を海外の方々に紹介できると思っています。不遜な言い方ですが、外国方が外国人目線で日本を語るよりも、少しだけ本物を伝えやすいと思っています。

大谷:海外の人に伝えたい日本の良さってどんなところでしょうか。

内山さん:以前、あるトークイベントで「イタリアで食べたイタリアンと、日本で食べたイタリアンとどっちがおいしいですか?」と聞かれたことがありました。食べた場所や季節にもよるという前提を述べつつも、「日本で食べるイタリアンの方がおいしいです」と答えました。「それは日本人の舌にあわせているからですか?」と、さらに質問されたのですが「そうではなくて、日本の方が素材の味を繊細に表現しているので」と答えました。ジャンルは違うのですが、刺身は生魚を切っただけではないですよね。旬の魚を獲り、船上で活け締めし、筋目を意識しつつ味わいやすい大きさ厚さにしてサーブする。そのような素材の味を活かすというディテールの結果で美味しくなるのだと思います。日本の良さって丁寧さ繊細さのこだわり、心配りです。美術工芸品、家電でも同じではないでしょうか。

大谷:こちらのOnJapan Caféもプロデュースされたとの事ですが、目指すものは何でしょうか?

内山さん:2020年には東京オリンピックも開催されますし、近年訪日外国人が急増しています。でも日本の魅力というか潜在的なパワーからすれば、もっと増えて欲しいですね。我々日本サイドも受け入れる体制とかシステムをもっと整えていけたらいいなと思っています。最近の訪日外国人は、アニメやコミックで日本通になり、寿司やラーメンは体験済みです。特に欧米を中心とした方々は、「観光=見る」だけではなく「日本体験」をしたいという方々が増えています。一例としては、巻き寿司作りを習ってみるとかです。その基地としてOnJapan Caféというリアルな場所、観光客や海外からの駐在員、そして日本人も集う場所を作りたいと思いました。茶、酒、書、食の体験できるイベントも多く実施しています。カフェの壁一面の本棚には、日本について書かれている英文書籍ライブラリー、Books On Japanがあります。本プロジェクトの名前の由来です。料理、美術、デザイン、建築、文学、マーシャルアーツ等、日本に関する英文書の種類と量では、有名大型書店に負けていません(笑)。外国人の方に日本茶を飲みながらライブラリーを楽しんで欲しいですし、日本人の方にも英文書で「日本を知る」を楽しんで欲しいです。

そして、ここを拠点として海外に向けて日本のいいものを発信していきたいですね。南部鉄器や弁当箱など、既に海外で人気のものもありますが、それに続くと言うか、海外進出したい地方の産品、日本酒、味噌、包丁などの製品を情報発信していきたいですね。カフェ店内に展示したり、映像を流したり、料理に使ったり、リアルに海外進出の際のツール制作やBook作りのお手伝いなどもさせていただければと思っています。

大谷:OnJapan Caféのお料理のこだわりはどんなところにあるでしょうか。

内山さん:基本の5味として世界にも認められている「UMAMI」を味わっていただけるようなお料理を提供しています。うま味豊富な地鶏やトマトを活用したり、発酵食品と組み合わせることで野菜のうま味を引き出したりを心がけています。シェフは大使館やホテルでの経験もあり、日本人のテイスト、外国人のテイストも理解しています。素材にはこだわり、美味しくて安心安全、ヘルシーを心がけていますが、原価高なのが課題でしょうか(笑)。原宿の裏通りにある隠れた落ち着いた空間なので、仕事場でも家でもない、the third placeとして自分の時間が持てる場所です。

大谷:ethicaの中では「日本の伝統文化」を1つテーマにしていて、海外向けのコンテンツも充実させていきたいと考えております。そこは英文も用意する予定です。

内山さん:フランスの方はジャポニズムとして浮世絵を受け入れ、現代でもジャパニーズ・ポップカルチャーをいちばん理解していますね。料理の世界でも和食とフレンチは大きく異なるように思えますが、トップシェフ達は互いにリスペクトし合って、それぞれの良さを吸収し合っています。UMAMIの浸透度もフランス人シェフがいちばんかもしれません。文化度のレベルが同じというか、根底が繋がっていますね。その意味では、ぜひ日本の伝統文化をethicaの中で発信していただきたいですね。

「good for me, good for the world」

大谷:最後に内山さんにとっての「私によくて、世界にイイ。」をお聞かせ頂けますでしょうか。

内山さん:両親ともに東京で、浅草育ちの私は三代以上続く生粋の江戸っ子です。東京は政治・経済、ハイテクやポップカルチャーの集積地でありながら、江戸情緒の残る不思議でクールな場所です。私の育った浅草、合羽橋はもちろんですが、谷根千、上野・御徒町、AKIBA、御茶ノ水、神保町・錦町と続く皇居の北に位置するラインが好きです。この地域を繋げて街歩きするのが私の楽しみであり、この「江戸」の息吹を感じられる東京を海外の方に必ず紹介するのが喜びです。

2020年のオリンピックに向けて、建設ラッシュなのかもしれませんが、前回1964年の時とは違う成熟した開発(整備)を考えて欲しいですね。この伝統を感じられる、世界的に見ても素晴らしい東京の文化資産をリノベーションでいい形で整えてほしいです。訪日外国人に訪れて欲しい場所にしたいですし、私たち日本人も日本を再発見する機会にしたいです。「更地に作る」から「伝統的なものに手を加えて活用する」という成熟した東京を表現することは、国内外のいいサンプルになり得ると信じています。

*この地域に関しては、「東京文化資源区」という有識者会議もできています。また、この皇居の北の地域を佐藤裕久氏(バルニバービ代表)は、NOP(north of Palace)と名付けて、ある意味でのルネサンスを呼びかけています。

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

■書籍「UMAMI: The Fifth Taste」
http://www.amazon.co.jp/Umami-Fifth-Taste-Michael-Anthony/dp/488996391X

■OnJapan Café
http://www.onjapan.tokyo/jp/

営業時間:平日 10:30–22:00 (LO 21:30), 土曜日,日曜日,祝日 11:00–20:00 (LO 19:30)
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6-8-1
TEL/FAX:03-6434-1228  Free wifi / non-smoking
行き方:明治神宮前駅より徒歩4分。 明治通りを渡り、明治神宮前の交差点を渋谷方面へ。 「anima」と「しずる」の間の道を左折。 道なりに右折し、すぐ角の「やいやい」を手前を左折。直進して突き当り右手。

ーーBackstage from “ethica”ーー

グローバリゼーションが進めば進む程、先ずは己を知る事。つまり自国を知る事が大事になってきます。日本に居る外国人の方が日本文化について詳しかったり、海外に行った際に、日本文化についての質問に対して答えられないようでは、英語がしゃべれてもインターナショナルとは言えない。Books On Japanには壁一面に厳選された日本文化の書籍があるので、いまいちど「日本を知る」を楽しんではいかがでしょうか。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
【エシカ独占インタビュー】宇賀なつみ 初エッセイ本『じゆうがたび』刊行記念
独自記事 【 2023/6/19 】 Work & Study
先月、長らく続いていた新型コロナウイルス感染症が5類感染症の位置付けとなったことで、ようやくマスクをはずして外出や旅行に繰り出す人々が増えてきました。旅行や観光業界の中では、近年世界中で注目されているものに「ウェルネスツーリズム」(※)というものがあります。そのトレンドを大々的にピックアップしたイベント、「ウェルネスツ...
インターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2 第二話の見どころをご紹介
独自記事 【 2022/12/5 】 Work & Study
11月7日(月)より配信がスタートした、SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2!「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演して、身近な話題や気づきから、持続可能なアクションやサステナブルについて考えを深めます。今回は、12月5...
SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組のシーズン2がスタート!
独自記事 【 2022/11/7 】 Work & Study
持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択された2015年から7年。サステナブルやSDGsといった価値観は耳に馴染んできたものの、まだまだ知らないことがたくさんありそうな奥の深い世界です。エシカでは、「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演するSDGsやエシカルに...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
【あむんが行く!第1話】 TBSのSDGsプロジェクト!「ミツバチ教室」で蜜ろうキャンドルづくりを体験
独自記事 【 2022/3/7 】 Work & Study
ethica編集部員の娘(5歳)が、様々なエシカルな体験を繰り広げていく、新企画「あむんが行く!」 “あむん”という名前の由来は、紀元前1000年頃より、二千年の長きにわたって栄えたマヤ文明のマヤ語からきています。意味は“森の神”。自然と親和性のある名前を持つあむんが、今後様々なエシカルな体験を繰り広げていきます。娘の...
“自分にも環境にもやさしい”インナーウェア「WACOAL ナチュレクチュール」
INFORMATION 【 2022/2/21 】 Fashion
肌に直接身につけるインナーウェアは着心地が大事。加えて、環境に寄り添ったアイテムであれば、なおさら手に取りたくなります。「Wacoal ナチュレクチュール」は“自分にも環境にもやさしい”を目指したインナーウェアラインです。肌ざわりの良さに加えて、環境や社会に配慮した製品へのこだわりが光ります。今回はそんなアイテムの魅力...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

<独占インタビュー映像> 和食の賢人、栗栖基さん(嵐山「熊彦」)、中村元計さん(一子相伝なかむら)、高橋拓児さん(木乃婦)、中東久人さん(美山荘)
日本の女の子たちの可能性を尾木ママ、安藤美姫さんがコメント、MAPPYちゃんがジャズピアノを演奏 「GapKids x ED」ローンチイベント開催

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます