ーー今回、「CITIZEN L Ambiluna」のデザインアドバイザーを務められました。時計のデザインを手がけてみて感じたことは?
たとえば図書館を作るときには「図書館ってなんだろう?」と考え、自分なりに言葉にすることから始めます。それと同様に、今回は「時計ってなんだろう?」と書き出してみました。すると、大きさこそ違うけれど、時計も建築もシンプルな中に本質的なものが凝縮されていることに気づいた。たとえば、「CITIZEN L Ambiluna」は光で動くエコ・ドライブが搭載されていますが、建築も光とは非常に密接な関係にあります。人は光の中で生活している、でも建築物を作ると光が遮断される。だから、どうやって光と人間の関係を作り直すかが建築の大きなテーマなのです。今回の「CITIZEN L Ambiluna」も、「時間」と「光」という本質的なものを問いかけるような、あるいは再発見できるようなものができたらいいんだーー。そう考えると、建築をやっているときと実は思考のプロセスはそんなに違わない。意外と似ているところが発見できたことは純粋におもしろかったですね。
国内外で高い評価を得る建築家。一体どんな幼少期を過ごし、どんな道のりを歩んでこられたのか、興味深くお話を伺いました。中でも印象深かったのが「物理学って、とてもクリエイティブなんですよ」というひと言。そんな藤本さんが初めて挑んだ時計のデザインには、建築家として積み重ねてきたキャリアやスキルだけでなく、新しい概念を生み物事を切り開いていくことに魅せられた少年時代の思いも、ぎゅっと詰まっている。「CITIZEN L Ambiluna」を愛おしそうに見つける藤本さんの優しい目は、そう語っているように見えました。